抄録
【はじめに】
腰痛症患者の理学療法は、単なるMuscle StrengthやFlexibilityの獲得ではなく、腰椎のStability向上を考慮する必要がある。このStabilityを確保するために重要なのが腹腔内圧メカニズム(Intra-abdominal Pressure:以下IAP)である。IAPの増加は、脊柱により大きな伸展モーメントを与えるほかに、胸郭・腹部のStabilityを高め、軸性の圧縮や剪断力を減少させるといわれている。今回、干渉波によりIAPに対してアプローチし、その増加の程度と腰痛の関係について検討した結果、若干の知見を得たので報告する。
【対象および方法】
対象は、本研究に対して同意を得た神経学的徴候のない腰痛患者12名(男性3名・女性9名、平均年齢66.3±13.3歳)。腰部のみに干渉波を行った群をA群、腰部と腹部に行った群をB群として対象者をランダムに分けた。干渉波による筋力増強で効果が認められたとする先行研究の多くが、期間が4週以上、治療回数15回以上である。そのため今回は、週3回の治療で5週間行った。IAPは、腹部の筋力を測定し、その値をIAPの増加として評価した。方法は、対象者を背臥位にし、腰部に血圧計のマンシェットを敷いた状態で腹筋群を収縮させ、上昇する水銀柱で測定した。腰痛症状はVisual Analogue Scale(以下VAS)による自覚的所見と、Buttock Heel Distance(以下BHD)・Straight Leg Raising(以下SLR)・指尖床間距離(Floor Finger Distance:以下FFD)・体幹の関節可動域(Range Of Motion:以下ROM)による他覚的所見にて評価した。体幹のROMは、カメラにて撮影し測定した。腹部の筋力とVAS・BHD・SLR・FFD・体幹のROMの分析には、t-検定を用い、危険率5%未満を有意とした。
【結果】
腹部の筋力とVAS・BHD・FFDではやや負の相関、SLR・体幹のROMではやや正の相関がA群とB群ともにみられたがt-検定での有意な差は認められなかった。腹部の筋力と腰痛症状の相関係数はA群・B群ともに±0.4~0.6であった。
【考察】
A群とB群・腹部の筋力と腰痛症状に有意な差は認められなかったが、後者の相関係数ではやや負の相関が認められた。腰部のStabilityを確保するには、過剰な運動から腰椎を保護する必要がある。そのためには体幹周囲筋に等尺性に近い共同収縮必要であるとされている。このため、相関がやや認められたということは腰痛症状が強いときは腹部の筋力が減弱している、もしくは十分に筋力を発揮できずに共同収縮力が低下し、腰椎の安定性も低下している状態にあることを示していると考える。今回は、十分に筋力増強を行うことが出来ず有意差が出るまでに至らなかったが、腰痛症状が強いために腹部の筋収縮を十分に行えずIAPの減弱をきたしている患者に対し、何らかの方法を用いてIAPを増加させることが症状軽減につながると考えられる。今後さらなる検討をしていきたい。