理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 677
会議情報

理学療法基礎系
随意運動に対する視覚的誘導と聴覚的誘導の影響について
機能的MRIによる脳内賦活部位の差の検討
*津吹 桃子渡邉 修来間 弘展松田 雅弘村上 仁之妹尾 淳史池田 由美米本 恭三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】運動障害に対し、従来より視覚的情報や聴覚的情報を手がかりに運動を促す方法がある。しかしこれらの技術がどのように症例によって使い分けされるべきかの研究報告は少ない。そこで、我々は、まず健常者を対象に、随意運動における視覚的誘導と聴覚的誘導の脳内賦活部位の差を機能的MRI (以下fMRI)を用いて測定し検討した。
【対象および方法】対象は健常者21名(利き手は、全員右利き、男性7名、女性14名、平均年齢28歳)で、手指のタッピング課題に関し、自発的運動群、聴覚的誘導群、視覚的誘導群、それぞれ健常者7名を設定した。運動課題は、母指と中指、次いで母指と示指、母指と環指、母指と小指をそれぞれ1秒間に1回の速度で順次タッピングする動作である。この課題を自己ペースで行うものを自発的運動群、1Hzのメトロノーム音に合わせて行う場合を聴覚的誘導群、鏡を通して視覚的に随意運動を確認しながら行う場合を視覚的誘導群とした。この課題を左右それぞれ40秒間、2回行った。各施行の間には40秒の安静をとった。MRIは、GE社製1.5T臨床用MR装置(Signa Horizon)を利用した。得られたデータは、SPM99にて位置補正、標準化、平滑化し、それぞれの群の7名のデータを重ね合わせ、有意水準0.01にて解析を行った。本研究は、東京都立保健科学大学および都立駒込病院での倫理委員会の承認を受け、すべての対象者にインフォームドコンセントを行い了解を得た。
【結果】 聴覚的誘導群は自発的運動群に比し、1)随意運動の対側の感覚運動野、2)随意運動の同側の小脳虫部の賦活領域が増大した。視覚的誘導群は自発的運動群に比し、1)随意運動の対側の感覚運動野、2)両側頭頂葉、3)両側下側頭回(area 37)、4)両側前頭前野、5)小脳虫部(随意運動の同側)の賦活領域が増大し、この傾向は特に左手指の運動で著明であった。また、聴覚的誘導群と視覚的誘導群の比較では、感覚運動野の賦活範囲が左手指運動時において明らかに視覚的誘導群において広範であった。
【まとめ】随意運動に対して視覚的誘導を与えた場合と聴覚的誘導群を与えた場合、明らかに賦活部位および範囲に差がみられた。視覚的誘導は聴覚的誘導に比し賦活範囲が広く、運動学習における視覚的フィードバックの有効性を支持するものと考えられた

著者関連情報
© 2006 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top