理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 827
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理学療法基礎系
腹圧上昇課題において骨盤位の違いが骨盤底部に与える影響
*田舎中 真由美山本 泰三
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抄録
【目的】
近年排泄障害に対する研究が進み、様々な報告がなされている。Nguyenらは臓器下垂と腰椎前彎減少及び骨盤後傾に相関があるとし、Mattoxらは腰椎前彎減少により臓器下垂のリスクが3.18倍にも及ぶとしている。BoらはMRIを用いて、坐位における骨盤底筋の随意収縮にて骨盤底部が10.8±6.0mm挙上し、腹圧上昇課題では19.1±7.4mm下降したことを報告している。またThompsonらは子宮脱者に骨盤底筋の随意収縮を指示すると、骨盤底筋は下降する傾向にあることを報告している。臨床場面においても排泄障害を有す症例の多くは骨盤後傾位をとっており、姿勢制御の破綻をきたしていることを経験する。しかし、腹圧上昇時の骨盤底部の動きを骨盤の位置の違いで測定したものは少ない。
本研究の目的は、超音波画像診断装置を用い、坐位において骨盤の位置を変えて腹圧上昇させた場合の膀胱後面の動きを測定し、骨盤位が骨盤底部に与える影響を検討した。
【方法】
対象は本実験に対する同意の得られた下部尿路に既往歴及び出産経験のない健常成人7名(男性3名、女性4名、平均年齢27.6±3.9歳)とした。
測定機器は超音波画像診断装置(東芝社製Femio8)を用い、4.6MHz(Tissue harmonic)で測定した。測定手技はWhittakerらの手技に準じ、恥骨結合の上部にプローブを当て、膀胱後面の動きを骨盤底部の動きとし測定した。測定肢位は硬い座面の上に半円柱をのせて、坐骨結節を直上にのせた状態を骨盤中間位とし、頂点より骨盤を前傾させた状態を前傾位、頂点より後傾させた状態を後傾位とした。姿勢保持筋による影響をできる限り排除するため、各骨盤位において前方はテーブルを支持させ、後方は背部の背もたれで支持させた。腹圧上昇課題は最大限にいきむ課題とし、事前に練習させた。測定は安静呼気終末時及び腹圧上昇課題時に行い、安静呼気終末時の膀胱内壁間距離を基準にし、各骨盤位における膀胱底部の下降率を算出した。統計学的分析は一元配置分散分析の後、Post hoc テストを行い、各骨盤位における膀胱後面の下降率を比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
骨盤位における骨盤底部の下降率の平均は各々前傾位6.5±4.5%、中間位10.8±6.8%、後傾位12.1±8.1%であった。3群間で主効果が認められ(p<0.05)、post hoc testにより中間位と前傾位、後傾位と前傾位の差が有意であった(p<0.05)。中間位と後傾位の間の差には有意差が認められなかった。
【考察】
中間位及び後傾位は前傾位に対して腹圧上昇課題において骨盤底部を下降しやすいことが分かった。中間位と後傾位には有意差はなかった。以上より排泄障害や性器脱を有し、骨盤後傾位をとっている症例では姿勢制御の破綻により、腹圧上昇課題の際に骨盤底部を下降させやすいと考える。
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© 2006 日本理学療法士協会
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