理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 839
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理学療法基礎系
歩行時手の振りが床反力測定値に及ぼす影響
*広田 桂介前田 貴司成田 新中島 義博西村 繁典梅津 祐一田川 善彦志波 直人
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抄録

【はじめに】歩行時、上肢を振ることは意識することなく行っている動作であるが、疾病により患側上肢の振りが少なくなることがある。それが歩行にどのような影響を及ぼしているのか疑問に感じる点である。そこで、健常者において自由歩行時と両上肢固定時歩行の床反力を計測しその違いを検討したので報告する。
【対象と方法】対象は健常男性6人と女性1人の計7名。年齢は21歳から39歳。方法は、2枚の床反力計上を一歩ずつ自由歩行と両上肢を三角巾で固定した歩行をそれぞれ5回測定した。
計測した床反力の3方向分力とVertical free moment(以下、VFM)のピーク値を求め、5回の平均値を算出し、自由歩行時と上肢固定時歩行で比較した。
【結果】床反力前後・側方・鉛直分力のピーク値には通常歩行と上肢固定時歩行に違いは認められなかった。VFMのピーク値は、自由歩行時の最大値は2.89Nm、最小値は-0.84Nm。上肢固定時歩行の最大値は3.95Nm、最小値は-1.12Nmであり、上肢固定時歩行の値が大きくなり、最大値には有意差を認めた。
【考察】VFMは物理学では偶力と言われ、方向が反対で大きさが等しく平行な力であり、この偶力が作用すると物体に回転する力が加わる。床反力では、作用点の鉛直周りのモーメントを示し、これは床面を鉛直軸にひねる量であり、体幹の回旋と関連していると言われている。
自由歩行と両上肢固定した歩行の床反力測定値は、3方向分力には違いが無かったがVFMは両上肢固定時歩行が大きくなる傾向にあった。このことは、歩行時、両上肢を固定することにより床を捻る量が自由歩行に比べると大きくなり、体幹の回旋に違いを生じていると考えられる。歩行時、上部体幹と下部体幹はお互い反対方向に回旋するが、両上肢を固定することによりこの回旋の程度が少なくなることがVFMの違いを生じたのではないかと考えられる。しかし、今回の検討では体幹の回旋程度まで検討することが出来なかったので、この点を踏まえて、三次元動作解析などを含めた解析が必要と考えられる。
【まとめ】1.健常者において、自由歩行と上肢固定時歩行の違いを床反力計にて評価した。
2.床反力3方向分力には違いはなかった。
3.VFMの値は、上肢固定時歩行が大きくなる傾向にあった。
4.歩行時の上肢の振りや体幹回旋の程度を、VFMを用いて検討できると考えられる。
5.三次元動作解析装置を用いて、体幹の回旋や上肢の振りとVFMとの関連性の更なる検討が必要である。

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© 2006 日本理学療法士協会
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