理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 849
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理学療法基礎系
呼吸時の腹筋群の筋活動についての検討
*谷田 惣亮分木 ひとみ山崎 敦白星 伸一水谷 名宇於崎 孝小林 亮一砂川 勇
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キーワード: 呼吸, 腹筋群, 筋電図
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抄録

【目的】
 腹筋群は,呼吸においては呼気時に活動する.一方,腹筋群は吸気の主動筋である横隔膜と協調的に作用することで,吸気においても関与するとされている.そこで,今回,腹筋群のなかの腹直筋と腹斜筋において吸気・呼気への関与について検討するため,腹筋群の緊張を変えた2つの肢位で肺機能検査を行い,吸気・呼気での筋活動を記録,分析した.同時に,筋活動と肺機能との関連を考察したので報告する.
【方法】
 対象は健常成人男性11名(平均年齢24.2±3.7歳)とした.方法は,被験者に座位と立位の2肢位で肺機能検査(肺気量分画,フローボリューム曲線)を行い,その間の腹筋群の筋活動を記録した.座位肢位は頭部まで背もたれのある椅子を使用し,膝・足関節90度屈曲位で足底を地面に接地させた.立位肢位は壁面に殿部,体幹が接するように立位をとらせた.
 肺機能検査にはスパイロメーターを用い肺活量,一回換気量,予備吸気・呼気量,努力性肺活量,1秒量,1秒率を測定した.表面筋電図の被験筋は右側の腹直筋(上部,下部),腹斜筋の3箇所とした.測定には多用途テレメータを用い,肺機能検査時の吸気,呼気相の筋積分値を求めた.さらに,それぞれの単位時間あたりの筋積分値を算出し,改変したMMTでの等尺性収縮の筋積分値で正規化し%IEMGとした.呼吸による胸郭運動に応じた変化を電気角度計にて計測し,吸気・呼気相の判別に用いた.
 統計学的処理として,肺機能検査の各データと各筋の%IEMGを,座位と立位で対応のあるt検定を用い比較し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
 肺機能検査は,肺活量(座位4.0±0.4L,立位4.1±0.4L),予備吸気量(座位2.1±0.4L,立位2.2±0.3L),1秒量(座位3.4±0.3L,立位3.5±0.3L)が座位に比べ立位で有意に増加した(p<0.05).
 筋活動は腹斜筋の%IEMGにおいて肺気量分画測定時の吸気(座位29.1±27.9%,立位52.3±54.0%),呼気(座位91.6±58.3%,立位157.3±92.9%),フローボリューム曲線測定時の呼気(座位93.6±59.5%,立位161.6±93.1%)で立位が有意に高値を示した(p<0.05).フローボリューム曲線測定時の吸気は立位が高値となる傾向を示すにとどまった.一方,腹直筋では全て有意差はみられなかった.
【考察】
 呼吸の筋活動では,腹斜筋が座位に比べ立位で高値を示したことから,立位では吸気・呼気とも腹斜筋が機能しやすい条件であったと考えられる.また,今回,腹筋群の緊張の異なる2つの条件下で測定を行ったが,腹斜筋は呼気のみでなく吸気でも高値を示したことから,吸気においても機能することが裏付けられたといえる.肺機能でも立位での肺活量,予備吸気量の増加がみられたことにより,腹斜筋が横隔膜を主とした吸気筋の効果的な活動に関与し,吸気が増加したことが推測された.

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© 2006 日本理学療法士協会
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