理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 79
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者における言語化を利用した素材識別覚の評価
*鈴木 里砂石崎 俊横山 明正
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抄録
【目的】脳卒中片麻痺患者に対する素材識別覚検査の評価結果の解釈や臨床応用についての方法論は確立したものはなく、研究報告も多くはされていない。本研究では素材識別覚評価をオノマトペを使用する言語化を利用して実施し、この結果を健常者と脳卒中片麻痺患者で比較検討し素材識別の知覚・認知過程の差を明らかにすること、また、言語化を用いた新しい評価法を提案することを目的としている。
【対象】健常者及び脳卒中片麻痺患者、各10名。
【方法】部位は足の母指・踵の二箇所で、閉眼にて能動的に触れたときの感触で判断させた。素材は5種類(やすり、ゴム網、綿クッション、ビニール、ダンボール)を利用した。予備実験で得られた10語のオノマトペ(ザラザラ、ブツブツ、ボコボコ、サラサラ、フカフカ、フワフワ、モコモコ、ガサガサ、ガリガリ、ツルツル)を用いて素材の感触を7段階の評定尺度法で判断させた。分析は、系列カテゴリー法を用いて、修正した尺度値を算出し利用した。その他の評価項目は2点識別覚を実施した。
【結果】尺度得点の平均値の結果は、やすりについては、健常者の得点が患者麻痺側より高い結果となり、(ガサガサp=0.0213、ザラザラp=0.0246)健常者と患者非麻痺側は有意差が認められなかった。患者非麻痺側は患者麻痺側より高い得点となった。(ガサガサp=0.0204、ザラザラp=0.0200)綿では、健常者が患者非麻痺側より高い得点、(フワフワp=0.0005、モコモコp=0.0007)、患者麻痺側より高い得点であった。(フワフワp=0.0002、モコモコp=5.722E-05)しかし、患者非麻痺側については患者麻痺側と有意差は認められなかった。ビニールでのツルツルについても、健常者は患者非麻痺側より高い得点であり、(p=0.0008)患者麻痺側より高い得点となった(p=2.874E-05)が、患者非麻痺側については患者麻痺側と有意差は認められなかった。ゴム網、ダンボールについては、健常者と患者間に有意差は認められなかった。二点識別覚は健常者と患者非麻痺側間で有意差が認められなかった。
【考察】素材識別の知覚認知では、やすりのような強い刺激の素材では、健常者と患者非麻痺側では違いはないが、綿・ビニールのような弱い刺激の素材では違いが認められることが示された。二点識別覚は健常者と患者非麻痺側の間で有意差が認められないが、言語化を用いた知覚評価では綿・ビニールなどで有意差が認められたことから、二点識別覚では明らかとならない健常者と患者間の差が言語化を用いた評価では表されるということを示した。本研究によって、健常者と患者麻痺側では素材識別の知覚認知に差異が認められ、患者非麻痺側は必ずしも健常者と同じような知覚能力を保持している訳ではないことが明らかとなり、言語化を利用した評価を利用できることが示唆された。
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© 2006 日本理学療法士協会
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