理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 103
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神経系理学療法
回復期初期脳卒中片麻痺患者の病棟内自立歩行に影響する因子の検討
*小峰 美仁秦 和文鈴木 孝子青木 伸暁高山 絵里竹内 朋代間嶋 満
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抄録
【目的】回復期初期の脳卒中片麻痺患者の病棟内自立歩行に影響する因子を知ることは、対象者の歩行プログラムを設定する上で重要な課題であると考えられる。今回我々は、回復期初期の脳卒中片麻痺患者(以下片麻痺患者)を対象に、片麻痺患者の病棟内自立歩行に影響を与える因子について検討した。
【対象】対象は、2001年10月から2005年10月の間に当院リハビリテーション科に入院し、発症から30日以内で検査測定が可能であった初発片麻痺患者83例(平均年齢63.4歳、性別:男性56例、女性27例、診断:脳梗塞46例、脳出血37例、障害側:右片麻痺38例、左片麻痺45例、下肢の片麻痺機能回復段階Grade(以下Grade)3-12、Motor FIM67.7/91点)であり、クモ膜下出血例、意識障害、失語症、左半側視空間無視を有する例、失調症状を有する例、下肢に整形外科的な疾患を有する例は除外した。対象例を杖・装具の使用に関わらず病棟内およびPT室内での歩行が自立であった27例(以下自立群)と、要監視および要介助であった56例(以下非自立群)の2群に分類した。自立群の内訳は、平均年齢62.7歳、性別:男性17例、女性10例、診断:脳梗塞15例、脳出血12例、障害側:右片麻痺14例、左片麻痺13例、Gradeは7-12であった。一方、非自立群は平均年齢63.7歳、性別:男性39例、女性17例、診断:脳梗塞31例、脳出血25例、障害側:右片麻痺24例、左片麻痺32例、Gradeは3-12であった。
【方法】自立群および非自立群の2群間で、年齢、診断、障害側、PT開始病日、麻痺側下肢表在感覚および深部感覚障害(以下深部感覚)、Grade、非麻痺側および麻痺側脚伸展筋力、BED・車椅子間の移乗FIM得点(以下FIM)について対応の無いt検定、カイ2乗検定を用い検定を行った結果、有意な差を認めた、深部感覚、Grade、麻痺側脚伸展筋力、FIMの4項目についてこれらを説明変数とし、強制投入法によるロジッスティック回帰分析を施行した。尚、非麻痺側及び麻痺側脚伸展筋力は、三菱電機(株)社製Strength Ergoを使用し、回転速度30minで測定した脚伸展トルク体重比[Nm/Kg]を採用した。移乗FIMは当科病棟看護婦が施行するMotor FIMから移乗動作の項目を採用した。
【結果・考察】ロジッスティック回帰分析の結果、有意なオッズ比を得た項目は、深部感覚、麻痺側脚伸展筋力、FIMの3項目であった(p=.024、p=.022、p=.046、オッズ比:.077、7.22、9.20)。今回の結果から、発症から30日以内の片麻痺患者の自立歩行の可否には麻痺側脚伸展筋力の影響が強く、脳卒中の理学療法ではより早期から麻痺側下肢筋の廃用予防と強化および移乗動作の獲得が重要であることが示唆された。
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© 2006 日本理学療法士協会
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