理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 249
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神経系理学療法
CIM療法に対する理学療法の介入経験
*花房 義和斉藤 寿子松本 元成上杉 太一林 智恵美石田 浩一玉置 由子道免 和久
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キーワード: CIM療法, 片麻痺, 脳血管障害
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抄録

【はじめに】
脳卒中により片麻痺を呈し、ある一定の条件を満たした患者に対して、「麻痺側上肢集中運動プログラムConstraint induced movement therapy(以下、CIM療法)」という新しい治療法が実施されはじめている。CIM療法は作業療法士により実施されており、医師・作業療法士による実施報告があるが、理学療法の関わり関するものはない。そこで今回、CIM療法の紹介ならびに理学療法の関わりの経験を報告する。

【CIM療法とは】
CIM療法の対象は脳卒中患者で、非麻痺側上肢をスリング等により固定し、麻痺側上肢のみで集中的な運動を行う。運動内容は、shapingと呼ばれる段階的運動項目を設定され、段階付けは適宜、作業療法士より提示される。CIM療法では準備段階から対象者が麻痺側上肢で準備する。療法中、作業療法士は適宜、心理的支援や動作に対するフィードバックを行い、対象者が運動中に疲労が蓄積されたと自覚すれば休憩をとらせる。

【理学療法の介入経験】
対象者は19歳女性(発症後2年5ヶ月)、37歳男性(同7ヶ月)、58歳男性(同2年1ヶ月)の3名で、独歩が可能で日常生活が自立しており、高次脳機能障害がなかった。約20日間入院し、週に5日、1日平均5時間(午前2時間、午後3時間)を作業療法室で過ごした。理学療法は、毎日のCIM療法実施後に20分間実施した。CIM療法は麻痺側上肢を集中して使用するため、体幹・麻痺側上下肢の筋緊張が亢進する事があり、また精神的なストレスが増すと予測された。これらに対して(1)体幹・麻痺側上下肢筋のストレッチング(2)リラクゼーションとしての屋外を中心とした歩行運動などが処方された。日々により変化はあるが、3名とも毎日のCIM療法実施後は筋緊張が亢進した状態であった。また精神的にもかなりのストレスを感じている様子が伺えた。理学療法終了後は体幹・麻痺側上下肢の筋緊張亢進が抑制され、歩行運動によりリラクゼーションが図れた。

【考察】
これまでの経験を振り返ってみると、理学療法は毎日のCIM療法後に実施してきたが、その前後での筋緊張の変化がわかりにくいなどの問題点が明らかになった。このため、毎日のCIM療法実施前の介入や、実施直後の作業療法士との情報交換を増やすなどの対応が必要である。またストレッチなどの直接的な介入のほかに、姿勢や歩容などの全身的な変化の評価や、対象者・施術者以外の第三者的視点からの経過観察・報告が、 CIM治療チーム内における理学療法士の重要な役割のひとつであると考えられた。

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© 2006 日本理学療法士協会
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