抄録
【目的】
脳卒中片麻痺患者が車椅子を駆動する場合、非麻痺側の上下肢を使用することが多いが、それは負担が大きく、操作が難しい。一方、重度の麻痺を有する片麻痺患者でも、リカンベント型のエルゴメーターをスムーズに駆動できることがよくある。我々はこのことに着目し、足こぎ型車いすについて検討してきた。今回、脳卒中片麻痺患者に対して、同速度にて普通型車いすと足こぎ型車いすを駆動してもらい、駆動効率を比較検討したので結果をここに報告する。
【方法】
脳卒中片麻痺患者10名(男性9名、女性1名)、平均年齢55.7±9.84歳を対象とした。選択基準は、1)発症後4週以上経過していること、2)下肢Br.stage3~4、3)研究の趣旨や車いす操作の方法を理解できること、4)半側空間無視がないこと、5)骨関節疾患の既往がないこと、6)心拍数に影響する薬剤や抗精神薬を内服していないこととした。
車いすは、普通型と 足こぎ型(Ezchair)を使用し、前者は非麻痺側上下肢での駆動、後者は両下肢でのペダリング駆動とした。両者とも、測定の前に十分な操作練習を行った。対象者は、車いす用トレッドミル上で普通型と足こぎ型車いすをそれぞれ1.0km/hと2.0km/hで4分間駆動した。その際、心拍数計測と呼気ガス分析を行い、最終30秒間の平均値から、同一速度における両車いす駆動の運動効率を比較した。
【結果】
心拍数、酸素摂取量、分時換気量の全ての値は、1.0km/hと2.0km/hの両速度において、普通型車いすよりも足こぎ型車いすの方が有意に低い数値を示した。
【考察】
結果より、直進駆動の場合、心拍数、酸素摂取量、分時換気量の全ての値が1.0km/hと2.0km/hの両速度において足こぎ型車いすの方で低かった。また、我々の先行研究で足こぎ型車いすの方が駆動速度は速く、かつ低いPCIを示し、操作性に関しては方向転換時の左右差が解消され、よりすばやく行えていた。主観的にも、足こぎ型のほうが楽に駆動できるとの評価を得た。このことから、片麻痺患者において、普通型よりも足こぎ型車いすの方が駆動効率が良いと言える。また、他の足こぎ型車いすの研究では、入所片麻痺患者が普通型と足こぎ型車いすを使用した場合の一日の自己駆動距離を比較したところ、足こぎ型を使用した方が移動距離が長く活動量が多かったとの報告もあり、片麻痺患者のフィジカルフィットネス効果も期待できる。しかし、ペダル等のために移乗が難しい、減速、段差や不整地での駆動が困難などの問題点もあり、今後、片麻痺患者の実用的な移動手段として、さらに改良を重ねる必要がある。
【まとめ】
片麻痺患者において、足こぎ型車いすの有効性を検討した。同一速度で直進の場合、普通型よりも足こぎ型のほうが駆動効率が良かった。今後、片麻痺患者の実用的な移動手段として、さらに改良を重ねる必要がある。