抄録
【目的】
体幹の柔軟性獲得や姿勢改善のためストレッチポール((株)LPN)を用いたコアコンディショニング(以下CC)が普及しつつあるが、その科学的根拠は得られていない。CCの立位姿勢および前屈・後屈中の脊柱アライメントへの効果検証を目的として、小規模な実験的研究(RCT)を実施した。
【方法】
長崎大学医学部倫理委員会の承認を得た後、研究参加希望者を募集した。取込基準は20代の健常な男女、除外基準を体幹、股関節、肩関節の外傷歴および愁訴の存在および妊婦とした。BMI値による層化無作為抽出法により34名の同意者をCC群(男5女8)、静的ストレッチ(SS)群(男3女7)、コントロール(C)群(男6女5)に割付けた。介入内容は、CC群では日本コアコンディショニング協会(JCCA)提唱のベーシックセブン(40分/日)、SS群では10種目の静的ストレッチ(40分/日)、とした。交絡防止のため3群ともにジョギングや自転車駆動以外の運動を禁止した。副作用監視・コンプライアンス向上のため週1回電話にてモニタリングを実施した。4週間の介入期間の前後に矢状面レントゲン撮影を実施した。得られたデジタル画像上で椎体の上・下縁の最前点・最後点の座標を求め、仙骨からTh4まですべての椎体間のなす角を算出した。反復測定2元配置分散分析とTukey/Kramer法により統計学的有意差を検討した。統計学的有意をp<0.05とし、各測定値の平均値と95%信頼区間を求めた。
【結果】
性別、年齢、身長、体重、BMIにおいて3群間に有意差は認められなかった。仙骨とTh4のなす角では、CC群の直立位の介入前・後に有意差(p=0.019)を認めた。CC群の直立位では介入前37.3º [30.8 , 41.5 ]から47.8º [41.5, 54.1]、後屈位では介入前53.2º [47.4, 59.1]から65.1º [57.4, 72.8]へと変化した。セグメント別の比較ではCC群の直立位(p=0.042)と後屈位(p=0.033)にて有意差を認めた。介入前後の角度差(±2度以上)は直立位のTh5/Sにて-2.5º [-5.1, 0.1]、L1/2にて2.4º [1.5, 3.3]、Th12/L1にて2.2º [0.6, 3.8]、後屈位のL1/2にて2.5º [0.3, 4.8]などであった。
【考察】
小規模なRCTの結果、CCは直立位および後屈位の脊椎アライメントに影響を及ぼすことが示唆された。直立位では下位腰椎の前弯減弱と上位腰椎の前弯増強、後屈位では上位腰椎の前弯増強が得られることが示唆された。この結果の一般化の範囲は健常な20代男女であり、高齢者、小児、脊椎疾患患者などへの効果の検証は今後の課題である。発表において各仮説の理論背景および効果発現の機序について考察する。
【謝辞】
本研究のスポンサーである日本コアコンディショニング協会、貞松病院、貴島病院に感謝致します。