抄録
【目的】
臨床において大腿骨頚部骨折患者の経過は入院前ADL、QOLの状態が入院期間に大きく影響することを経験する。患者の入院前状態の把握は本人や家族に確認することが多い。しかし当院では質問項目の内容はセラピスト各々の判断で行っており、入院前の状態を把握するための共通した評価スケールは使用されていない。受傷年齢の高齢化や当院の役割である急性期病院の立場から考え、より早期に大腿骨頚部骨折患者の入院期間内での動作到達レベルを予測する必要がある。そこで、入院前の意欲や認知などを評価できると考えられ、なおかつ観察法によるQOL の指標となる意欲の指標(Vitality index)を用いて入院期間内での動作レベルとの関係を調べることで、より早期に方向性について介入することを目的とした。
【方法】
評価方法は起床、意思疎通、食事、排泄、リハビリテーション・活動の5項目(各項目3段階評価)からなるVitality index(以下VI)を用いた。対象は当院において大腿骨頚部骨折で手術を行った症例44例、男性13名女性31名、平均年齢80.4±11.7歳、に対し(平均理学療法施行日数19±6.4日)家人・本人から聴取し評価した。VI満点群と非満点群と入院期間内での歩行自立群との相関関係、VI点数と受傷前・退院時歩行レベル・退院時生活自立度・移乗自立度との相関関係を検証した。なお入院前の状態で動作を阻害する内科的合併症がある症例は除いた。
【結果】
VI満点群と入院期間内歩行自立群との間に危険率1%で有意な相関が認められた。また、VIの点数と受傷前・退院時歩行レベル、退院時生活自立度、移乗自立度全てにおいても相関関係が認められた。
【考察】
急性期病院という性格上、パス適応の是非を考慮するときに早期に患者の入院期間内での予後を予測することは重要である。臨床上、VIを用いるメリットとして観察法におけるQOL評価であるので家人に聴取でき評価が容易であることが考えられる。また、認知面との相関関係が認められていることと、今回の結果から受傷前歩行レベルにも相関関係が認められたということを考慮すると入院前の廃用症候群を反映する評価でもあると考えられる。さらに、VI満点群は入院中に何らかの歩行レベルで自立する傾向が認められることと、VI点数と退院時歩行レベルとの相関関係を考慮すると退院時の予後予測をする1つの指標になりうると考えられ、より早期に住宅環境設定や転帰先の検討などに関わることができると考える。