理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 155
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骨・関節系理学療法
大腿骨頚部骨折術後のリハクリニカルパス作成の有効性
*飛永 浩一朗兵頭 辰也池田 憲太郎矢木 健太郎小八重 明美押川 達郎渡邉 哲郎井手 睦
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抄録
【はじめに】 当院の先行研究で大腿骨頚部骨折術後の歩行訓練導入時期について受傷前歩行能力と認知症の有無で明確化することができた。これに基づき術後リハクリニカルパスを作成し、平成16年5月よりリハのパスを用いた結果、歩行訓練の進行に変化が見られたので報告する。
【対象】 平成14年12月から平成15年12月までに大腿骨頚部骨折・転子部骨折・頚基部骨折に対し骨接合術を施行し術後翌日より荷重が許可された65歳以上の女性患者78名(以下A群、平均年齢82.5±7.0歳)、及びパス導入後の平成16年5月から平成17年8月までに当院における同条件の女性患者147名(以下B群、平均年齢82.6±6.5歳)を対象とした。全員が受傷前屋内歩行は自立していた。
【方法】 訓練時の歩行能力を平行棒内立位・平行棒内歩行・歩行器歩行・杖歩行の4段階に分類し、経時的変化を検討した。受傷前歩行レベルを1)認知症なし独歩群(A群:42名、B群:39名)2)認知症あり独歩群(A群:30名、B群:16名)3)認知症なし物的介助歩行群(A群:30名、B群:9名)4)認知症あり物的介助歩行群(A群:45名、B群:14名)に分類した。この4群において4段階の歩行訓練導入までの日数をパス導入前後での比較を行った。統計学的処理には対応のないt検定を用い、有意水準は5%とした。なお認知症は改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)で20点以下とした。
【結果】 パス導入前後で,対象者の年齢・HDS-R・術前リハ期間において有意差は認められなかった。1)受傷前認知症なし独歩群では術後リハ期間、歩行器歩行・杖歩行導入時期でB群が有意に短縮していた。2)受傷前認知症あり独歩群では歩行器歩行・杖歩行導入時期でB群が有意に短縮していた。3)受傷前認知症なし物的介助歩行群ではA群B群間の歩行訓練導入時期に有意差は認められなかった。4)受傷前認知症あり物的介助歩行群では歩行器歩行導入時期でB群が有意に短縮していた。
【考察】 川上らは大腿骨頚部骨折のリハクリニカルパスによる早期荷重は歩行能力の維持に有効であると報告している。今回、早期荷重が許可された大腿骨頚部骨折患者術後の歩行訓練導入時期について当院の先行研究に基づいたパス導入後、受傷前独歩群の歩行開始時期に有意な短縮がみられた。要因は1)患者へ歩行訓練進行の情報提供が出来たこと2)理学療法士がパスを指標に訓練が進められたこと3)カンファレンスで問題点の共有が容易になったことが推察される。受傷前物的介助歩行群は既往症の存在など歩行能力の低下因子が様々であり、訓練進行が各患者で異なる事が、独歩群と同様の結果が得られなかった要因と考える。
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© 2006 日本理学療法士協会
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