理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 161
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骨・関節系理学療法
手術不能な大腿骨近位部骨折症例に対する理学療法(第2報)
*江郷 功起磯野 美奈子山下 満博西辻 一成山田 徹久米 慎一郎
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抄録
【目的】
我々は第34回学術大会において手術不能な大腿骨頚部骨折症例の問題点、理学療法上の注意点を報告した。昨今急性期病院においては在院日数の短縮化に取り組まれており、当院においても同様である。そのような状況の中でハイリスクがあるゆえに観血的治療が出来ない大腿骨近位部骨折症例に対し、どのような理学療法の展開が図れるのであろうか。今回我々は症例数を増やし、調査および比較検討を行い、若干の知見を得たので報告する。
【方法と方法】
対象は平成7年5月から17年3月までに当院に入院し、手術不能と判断された大腿骨近位部骨折症例で理学療法を施行した13例とした。このうち、前回報告した平成10年までの症例7例(全例女性、平均年齢は79.1±7.1歳、骨折型は頚部骨折3例、転子部骨折4例)をA群、平成11年以降の6例(女性4例、男性2例、平均年齢82.7±5.6歳、頚部骨折2例、転子部骨折4例)をB群とした。全症例とも受傷前歩行能力は屋内歩行自立以上であった。調査項目は1.手術不能となった既存疾患、2.PT開始期間、3.入院期間、4.歩行能力の推移(屋外自立5、屋内自立4、介助歩行3、車椅子2、ベッド上1と数値化)、5.生活場所の推移、6.理学療法内容を調査した。統計処理もあわせて行い、危険率5%を有意水準とした。
【結果】
1.観血的治療不可能となった主な既存疾患:A群循環器3例、呼吸器3例、内科疾患1例であった。B群循環器2例、呼吸器1例、内科3例であった。2.PT開始期間:A群32.0±9.1日、B群18.35±9.6日となり、有意差を認めた。3.入院期間:A群110.7±32.3日、B群55.2±31.8日となり、有意差を認めた。4.歩行能力の推移:A群受傷前4.6が退院時2.4となり差を認めた。B群も同様に4.3から2.0となり差を認めた。5.生活場所の推移:A群受傷前自宅6例、入院1例が退院時には自宅1例、転院4例、施設1例、死亡1例であった。B群受傷前自宅5例、施設1例が退院時には自宅1例、転院3例、施設1例、死亡1例であった。6.理学療法内容:A群はROM練習、筋力練習、起居練習、端座位練習は7例全例に行い、うち車椅子練習は6例に行えた。立位練習まで可能は4例、うち歩行練習まで可能は2例であった。B群はベッド上安静で転院した1例を除いた5例とも端座位までの練習は可能であり、うち4例は車椅子練習へ進み、さらに2例は起立練習、そのうち1例は歩行練習まで進むことが出来た。
【考察】
今回の調査からPT開始を早期に行う事により入院期間は短縮しても車椅子までの移動能力獲得は可能であった。ハイリスク症例に対する理学療法では、車椅子までの回復を一つのゴール設定にすることが示唆された。歩行能力の回復は困難な症例が大半で、そのため転院して加療する症例が多いと思われた。
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© 2006 日本理学療法士協会
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