抄録
【はじめに】大腿骨近位部骨折患者の転帰に関する予後因子としては、受傷前の歩行能力、認知症の有無、早期リハ実施の可否性等が報告されているが、受傷前自宅生活者で歩行能力が高かった症例でも、自宅復帰困難となる症例がみられる。そこで今回、受傷前自宅生活で自立歩行が可能であった患者の自宅復帰率と、その予測因子について調査したので報告する。
【対象】2003年10月から2005年9月までに新小倉病院整形外科において大腿骨頸部骨折及び大腿骨転子部骨折に対して手術施行された患者で、受傷前自宅生活者47名のうち屋内歩行自立以上の歩行能力を有していた39名(男性4名、女性36名、80.2±6.6歳)を対象とした。内訳は、大腿骨頸部骨折25例、大腿骨転子部骨折14例であった。術式は、人工骨頭置換術15例、compression hip screw10例、γ-nail5例、intramedullary hip screw3例、cannulated cancellous hip screw6例であった。
【方法】対象を退院時の転帰に基づき、自宅退院群と施設群に分類し、年齢、Mini Mental State Examination(以下、MMS)得点、骨折型、術式、術後早期歩行能力(改良Timed Up and Go Test(以下、早期TUG))について2群間で比較した。術後の荷重歩行はクリティカルパスに則り、原則として1週以内に開始した。早期TUGは荷重開始から1週間以内に行うこととし、平行棒内にて椅子から起立し、3m往復歩行後着座するまでに要した時間(秒)を測定した。統計分析は、各々の項目について、Wilcoxonの順位和検定を用い、骨折型、術式についてはPearsonのカイ2乗検定を用いて行った。
【結果】自宅退院率は76.9%(30/39名)であった。自宅退院群:施設群間の比較は、MMS得点(22.6±5.8点:15.8±7.1点,P<0.05)、早期TUG(29.8±16.3秒:56.1±33.0秒,P<0.05)で有意差がみられた。骨折型、術式、年齢においては、有意差は認められなかった。
【考察および結語】今回の結果から、自宅生活者において受傷前自立歩行が可能であっても、自宅復帰可否の因子として、諸家の報告と同様に、認知症の有無が関与していることがわかった。更に、予測因子として、術後早期の歩行能力が関与していた。このことから、受傷前自宅生活者で歩行能力の高かった症例でも、認知症や術後早期歩行能力の低い症例に関しては、自宅復帰困難と予測されるので、リハビリテーションの強化や早期からの環境調整介入などを行っていくべきだと考えられた。