抄録
【はじめに】
外来患者の主訴である1つに膝痛があり、様々な原因で慢性症状に移行し高齢者の活動性を低下させる大きな要因となっている。そのリハビリテーション(以下リハ)においては、環境や生活状況から現在の膝機能よりも高い要望を聞くことも少なくない。今回高齢者の外来患者を対象に、日常生活(以下ADL)上で正座遂行困難の期間(以下非正座期間)と利き足(以下右側)・非利き足(以下左側)より膝痛側の検討を行う事を目的とし、その結果膝痛について若干の見解が得られたので報告する。
【対象と方法】
2004年度に膝痛治療を目的として、当院を来院した変形性膝関節症(以下OA)患者を対象とした。そのうち研究の主旨説明に同意が得られた100名(男性27名、女性73名、平均年齢71.8±7.6歳)にアンケート調査ならびに検査・測定を実施した。なお左利きの者、歩行時に杖を使用する者、既往歴として膝手術や中枢性疾患などを伴う者は除外した。調査・測定項目は、病名・非正座期間・膝痛側・膝変形・職業・身長・体重・体脂肪率・大腿周径差(膝蓋骨直上5cm)とした。方法は、非正座期間と病名、現在の膝痛側、体型、膝周径差の比較をカイ二乗検定にて行った。なお有意水準は5%未満とした。
【結果】
非正座期間の1年未満(42名)と1年以上(58名)において、病名・膝痛側・大腿周径差に有意差が認められた。それぞれの特徴的なものとして、1年未満では右OA・右側・周径差(右<左)、1年以上では両OA・左側・周径差(右>左)が多かった。その他の項目において、非正座期間との有意差は認められなかった。
【考察】
膝痛による当院外来患者の多くは高齢者であり、ほとんどが和式家屋を伴う事からも正座についての要望が高い印象であった。そこで今回非正座期間から膝痛側について検討を行った結果、ADL上正座が苦痛となるような痛みが出現しそれが長期化する程、膝痛の主訴側が左側に偏る傾向が見られた。この理由の一つに、膝痛を抱える状況下は、様々な痛みを我慢しADLを代償運動で過ごしてきた背景が伺える。特に今回の対象者は農業などの肉体的労働を7割以上が行っており、左側下肢は作業上軸脚傾向とする場合が多く、動的機能を果たす機会が少ない。よって右側膝痛出現時の代償や両膝痛の長期化等が、左側の必要以上の負担となり今回の結果に影響を及ぼしたものと推測する。したがって膝痛出現時より指導内容やリハ実施等に、障害側だけではなく両膝トレーニングを進める事も重要ではないかと考える。今後経過的な状況等を確認することにより、より詳細な検討を進めていきたい。