抄録
【はじめに】
我々は,中高齢者の慢性的な膝痛改善を目的として理学療法を応用したヘルスケアサービスを実施するためのシステム構築を試み,その効果について検討することを目的に研究事業を実施した。膝関節の疼痛が日常生活身体活動度(Phys-Act)を制限することは容易に予想されるため,Phys-Actは我々が実施した介入効果のアウトカム評価項目の一つとして有効であろうと考えた。本研究は,歩行速度,及びPhys-Actを指標として介入プログラムの効果について検討することを目的とした。
【方法】
1)対象:札幌市及び近郊在住の55-75歳の女性で,膝関節に慢性的な疼痛又は不安感を訴えるものとした。参加応募者の中から除外基準[(1)日本整形外科学会膝疾患治療成績判定基準(JOA-S)が70点以下,(2)急性的に疼痛が憎悪し3週間以内に病院を受診した症例,(3)疼痛や拘縮のために横座り又は胡坐が不可能である,(4)膝痛以外に疾患を有する]適応外の者を一次抽出した。さらに本研究固有の調査票への回答値から層化割り付けして分類された介入群と対照群のうち,介入群17名を対象に測定を行なった。対象者は,事前に倫理委員会の承認を得た研究計画書に基づいて十分な説明を受けた後,同意書に署名した。
2)測定方法と分析:(1)歩行速度は通常歩行速度と最大歩行速度を計測した。いずれも11mの歩行路上で3-8mの区間に要する時間を計測した。(2)Phys-Actの計測には,腕時計型行動記録装置ViM(マイクロストーン社製)を用いた。この装置は加速度センサとジャイロセンサにより運動状態を10種類の活動度に分類して評価することができる。今回は歩数,運動種類と活動度の相対的割合(活動パタン)を指標とした。介入プログラム開始後および終了前2週間の各期間に,各自が4日以上装着し,一日の平均を算出して個人の代表値とした。ViMを装着している期間に明らかに日常と異なる活動をした日は分析から除外した。
3)介入プログラム:介入は1回当り約90分,週2回を12週間実施した。介入プログラムは,ストレッチング,固定自転車による有酸素運動,マシンや自重による筋力強化運動,不安定パッドやボールによるスタビライゼーションで構成した。
【結果】
通常歩行速度は変化しなかったが,最大歩行速度は介入後に有意に速くなった。Phys-Actについて,歩数には変化がなかった。しかし,活動パタンは有意に変化し,坐位作業と判断される活動割合が有意に減少し,立位作業や軽いスポーツと判断される割合が増加していた。
【考察とまとめ】
介入プログラム後には,高齢者の基礎的運動能力を代表するといわれる最大歩行速度が改善していた。さらに,活動パタンの変化から介入後にPhys-Actが高まったことが示唆された。これらの結果は本介入プログラムの効果を示すものと考えた。