抄録
【目的】自宅での転倒により左大腿骨骨幹部骨折を呈し観血的骨接合術(髄内釘)を施行した症例を経験した。骨折治療とともに大腿四頭筋筋力の回復程度を水銀血圧計を用いて測定し、また大腿周径との関係によりpatella settingの有用性にも着目したので考察を加え報告する。
【方法】patella setting時の収縮力(単位:mmHg)の評価は、ベッドに両腕を組んだ長坐位になりベッドと測定側の膝窩との間に血圧計のマンシェットを差込み、体重負荷を避けpatella settingするよう指導した。その際、膝窩部で圧を感じやすくするために開始状態が30となるように設定した。水銀の上昇を視覚フィードバックしながら運動を行った。あわせて膝蓋骨上縁部及び5、10、15cmの周径計測も行った。
【治療経過と結果】術後3日目理学療法開始。大腿周径は膝蓋骨上縁で3.5cmの腫脹が認められた。収縮力は左側50、右側60であった。7日目に左側86、右側90と収縮力に向上が見られた。18日目、左膝屈曲ROMがfull rangeとなった。20日目、左膝のextension lagが改善された。28日目より1/3部分荷重を開始した。疼痛は認められなかったが、立ち上がり動作、歩行中の方向転換の際に多少の動揺がみられた。収縮力は左側100、右側110であった。35日目から2/3部分荷重を開始し収縮力は左側102、右側114であった。42日目より全荷重となったが術前の歩行でT-caneを使用していたこともあり股関節、腰椎への負担を考えT-caneでの歩行とした。収縮力は左側108、右側120であった。45日目退院となり収縮力は左側118、右側120であった。
【考察とまとめ】術後早期からpatella settingを開始し、非荷重の時期にfull rangeのROM獲得、extension lagを改善することができた。これはpatella settingを行うことで関節内の貯留物を膝蓋上嚢の上部まで行き来させるポンプ効果を起こし、膝蓋上嚢の癒着を予防することができたためだと考えた。今回着目したpatella settingの収縮力については7日目に両側とも収縮力に向上が見られた。その後、1/3部分荷重開始時より周径とともに収縮力の増加が認められた。これは荷重をかけての歩行練習や筋力増強練習の効果また左膝関節の完全伸展が行えるようになったことによるものだと考えた。これらの結果よりpatella settingは筋収縮感覚の再構築による筋萎縮予防、拘縮予防の重要なプログラムと考えた。また今回使用した水銀血圧計での評価は簡便ではあるが術式、治療プログラムとの関連や年齢など様々な観点から研究していく必要性が示唆された。