理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 175
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骨・関節系理学療法
健常者における内側・外側方向への膝蓋骨可動性の定量的評価の試み
膝関節0度・30度屈曲位による検討
*中島 猛太田 進八木 了
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抄録
【目的・背景】
 膝蓋骨可動性評価としては一般的にpatellar gliding testが行われるが、その評価は主観的であり、正常値の設定は困難であった。われわれは2nd Asia Pacific Conference on Biomechanics(APB)2005において膝蓋骨可動性測定器(PFA:Patellofemoral Arthrometer)を紹介し、膝蓋骨可動性の定量的評価とその再現性について報告した。今回、PFAを用い健常者における膝蓋骨可動性を定量的に検討した。
 健常者における膝蓋骨可動性の定量的データを提示することを目的に、内側・外側方向の膝蓋骨可動性の比較を膝関節伸展0度位、膝関節屈曲30度位で行った。また、膝関節屈曲角度の相違が内側・外側方向の膝蓋骨可動性に与える影響について検討した。
【方法】
 膝関節疾患の既往のない健常膝30膝(男性15名、女性15名、平均年齢29±6歳)を対象とした。膝蓋骨可動性の測定はPFAを用い、膝関節伸展位(0度)、30度屈曲位でそれぞれ内側、外側方向に3回ずつ測定し、その平均値を代表値とした。被験者間比較を可能にするために膝蓋骨幅で補正したPatellar mobility index(%)PMI=(膝蓋骨可動距離/膝蓋骨幅)×100を求めた。統計処理にはt検定(有意水準5%)を用いた。
【結果】
 膝関節伸展位(0度)における膝蓋骨の内側PMIは20±4%、外側PMIは23±6%であり、内外側方向の可動性に有意差を認めた。また、膝関節屈曲30度における膝蓋骨の内側PMIは20±3%、外側PMIは24±6%であり、内外側方向の可動性に有意差を認めた。
 内側方向および外側方向の可動性に関しては膝関節伸展位(0度)と膝関節30度屈曲位の間に有意差を認めなかった。
【考察】
 膝蓋骨可動性を定量的に評価することは一般的に行われていない。今回われわれは太田らの開発したPFAを用い、健常膝の膝蓋骨可動性の定量的評価を試みた。その結果、膝蓋骨は内側よりも外側方向への可動性が高いことが定量的に示された。一方、膝関節伸展位(0度)、30度の違いは膝蓋骨可動性に影響しなかった。今後、データを蓄積することにより、膝蓋骨可動性の正常値の設定や、膝蓋骨可動性と膝関節機能との関係の定量的評価が可能となると考えられた。
【まとめ】
 健常膝の膝蓋骨可動性についてPFAを用いて測定し、膝蓋骨可動性の定量的評価を行った。膝関節伸展位(0度)、30度屈曲位では内側よりも外側方向への可動性が高く、膝関節伸展位(0度)、30度の違いは膝蓋骨可動性に影響しなかった。
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© 2006 日本理学療法士協会
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