理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 261
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骨・関節系理学療法
年齢の違いによって指椎間距離と肩関節内旋可動域に差があるか
*島 俊也岩本 久生金澤 浩出口 直樹吉田 和代浦辺 幸夫白川 泰山
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抄録
【目的】肩関節疾患では結帯動作に支障があらわれることがあり、しばしば日常生活活動に障害をもたらす。結帯動作の評価としては指椎間距離が用いられることが多い。野々垣ら(1983)は指椎間距離とIRとの間には相関が認められることを報告している。我々は指椎間距離とIRとの関係について、健康な成人女性では相関が無いことを報告した(2005)。本研究では、健康な成人女性と健康な高齢女性について指椎間距離とIRの関係に差があるかを検討した。
【方法】対象は本研究の趣旨に同意の得られた成人女性65名130関節(成人群)と、健康な高齢女性56名112関節(高齢群)である。いずれも現在まで肩関節に疾患の既往はなかった。成人群の平均年齢(±SD)は29.0±4.6歳、高齢群は73.3±1.7歳だった。IRの測定は背臥位にて肩関節第2肢位で上腕骨頭が前方突出する直前の角度を同一検査者が他動的に測定した。それぞれの測定は3回行い、平均値を対象の代表値とした。利き手側、非利き手側の指椎間距離とIRを測定し、成人群と高齢群の2群間で対応のないt検定を用いて比較した。また、指椎間距離とIRとの関係はSpearmanの順位相関係数を用いて検定した。いずれも危険率5%未満を有意とした。
【結果】指椎間距離において、利き手側では成人群14.6±3.8cm、高齢群18.3±3.1cmだった(p<0.01)。非利き手側では成人群12.6±4.5cm、高齢群15.1±2.0cmだった(p<0.01)。IRにおいて、利き手側では成人群74.9±15.9°、高齢群58.4±5.9°だった(p<0.01)。非利き手側では成人群76.7±20.0°、高齢群65.3±10.0°だった(p<0.01)。左右の指椎間距離とIRの関係は、成人群でr=-0.31(p=0.72)、高齢群でr=-0.52(p<0.01)だった。
【考察】肩関節の可動域は高齢になるほど減少すると報告されている(後藤ら、1998)。本研究においても高齢群の利き手側、非利き手側で指椎間距離の延長およびIRの減少を認めた。今回の対象は、肩関節疾患の既往がなく著明な脊椎の変形もなかったことから、指椎間距離の延長とIRの減少は加齢に伴い生じたものであると考えられる。また、指椎間距離とIRとの関係では、高齢群にのみ有意な相間が認められたことから、加齢による指椎間距離とIRの変化は、成人群とは異なった推移をとるものと考えられた。
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© 2006 日本理学療法士協会
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