理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 264
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骨・関節系理学療法
拘縮期肩関節周囲炎患者に対する理学療法効果
*額谷 一夫野村 紗弥可山崎 有紀美井畑 裕美高橋 宏幸
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抄録

【目的】肩関節周囲炎による拘縮の改善に関節可動域練習等が効果あると言われている。しかし、病態・経過が多彩なこと、患者の長期間の追跡が困難であることからその効果検証が難しい。本研究では拘縮期の患者に反復型実験法を用い、比較的長期間理学療法介入(PT)を行い、その効果を検証したので報告する。
【方法】対象は左肩に可動域制限がある58歳女性。発症から8ヶ月経過して初めて受診、非外傷性肩関節周囲炎の診断を受けた。MRI上、腱板断裂等の異常所見は認められなかった。三角筋前部の軽度運動痛以外は痛みの訴えはなく、両手での洗顔・洗髪、反対の肩に触れる、更衣動作は何とか可であったが、エプロンの紐は結べなかった。被検者は一切の治療を希望していなかったが、実験計画を説明し同意を得た上で、反復型実験計画(ABA型デザイン)を用い、同一理学療法士が約5ヶ月間計5回PTを行った。Aの基礎水準測定期では、被検者は通常通りの仕事を行い、Bの操作導入期では、それに加え関節周囲の短縮した軟部組織の伸張を行った。治療は1回約20分間であった。介入Bは一回目9日間7回、二回目9日間5回、三回目14日間9回、四回目22日間10回、五回目16日間11回であった。Aは1回目7日、2回目7日、3回目10日間、4回目15日間、5回目19日間、6回目34日間であった。同僚の理学療法士2名が実験期間を通し自動・他動関節可動域、痛み、筋力、肩甲骨アラインメント等を検査測定した。結果は図表グラフ上で目視により分析した。
【結果】PTにより肩屈曲、外転、内転、外旋、内旋、水平屈曲の自動・他動可動域が改善した。伸展、水平伸展は介入の有無に関わらず大きな変化が見られなかった。結髪・結帯動作は介入により改善した。各可動域はおおむね三回目までの介入で大きく改善し、その後は変化が少ない、あるいは持続的に緩やかに改善した。他動の外転は5回目の介入でも改善がみられた。他動と自動の可動域改善の大きさは、屈曲、外転、内転では大きな違いはなかったが、内外旋では違いがあった。肩甲骨アラインメントは初回の介入で改善し、その後その可動域・運動に左右差は認められなかった。
【考察】短縮した軟部組織の伸張にPTは効果があり可動域は改善する。伸展・水平伸展は当初から可動域低下が少なかったためと考えられる。外旋の可動域低下は肩関節周囲炎でよく報告されている。改善に時間を要したのは、また自動他動で差が生じたのは、外旋に関与する軟部組織は伸張しにくい、治療時間・内容不適切等のためかもしれない。絶えず評価し治療内容を見直す必要がある。また、一度改善が得られると患者がその可動域を自分で使い始めることも結果に影響すると考えられる。適切な自主練習プログラムが有用かもしれない。
【まとめ】肩関節周囲炎による拘縮期の可動域制限に対しPTは改善を促進する効果がある。

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© 2006 日本理学療法士協会
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