理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 263
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骨・関節系理学療法
X線上肩峰骨頭間距離骨頭径比評価の有効性についての検討
第二報 拘縮肩群と上腕骨近位端骨折群の比較
*井上 宜充岡本 賢太郎川 桃子久合田 浩幸荒井 哉美渡邊 麻美田村 拓也山本 和良
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抄録

【目的】我々は前大会で肩関節周囲炎後の拘縮肩例(以下拘縮肩群)において、肩峰骨頭間距離(以下AHD)及び、AHDの骨頭径比(以下A/H比)と肩関節可動域との関連について調査し、A/H比と肩関節外転、屈曲可動域の健患差に負の相関を認めたことを報告した。今回は上腕骨近位端骨折例(以下骨折群)を対象に同様の調査を行い、拘縮肩群の結果と比較をしたので報告する。
【方法】対象は、当科において肩関節可動域訓練を実施している、対側が健側である上腕骨近位端骨折後患者11例(観整固後8例・保存療法3例:平均年齢60.3±15.6歳、平均受傷後期間30.5±17.0週)であった。X線正面像よりAHDを測定した。また、上腕骨頭径を測定し、AHDを上腕骨頭径で除したものをA/H比とした。AHD、A/H比と肩関節外転、屈曲、伸展、外旋、内旋可動域の健患差との相関ついて検討した。相関の判定にはSpearmanの符号順位相関係数検定(P<0.05)を使用した。
【結果】骨折群のAHDは9.9±2.9mm、A/H比は0.20±0.05であった。骨折群の肩関節可動域健患差は外転54.4±30.6゜、屈曲52.4±31.3゜、伸展11.5±7.7゜、外旋49.5±23.2゜、内旋34.3±18.9゜であった。骨折群のAHDと各可動域健患差の相関係数は、外転0.21、屈曲-0.16、伸展0.04、外旋-0.21、内旋0.36であった。骨折群のA/H比と各可動域健患差の相関係数は、外転0.26、屈曲-0.16、伸展0.03、外旋-0.19、内旋0.4であった。AHD、A/H比ともに、全ての可動域と有意な相関を認めなかった。
【考察】前回の報告より、肩関節周囲炎後の拘縮肩群ではA/H比と肩関節外転・屈曲可動域の健患差に負の相関を認め、外転、屈曲可動域の健患差が大きいほどA/H比は小さかった。これは、肩関節周囲炎後の拘縮肩では屈曲・外転など挙上動作時に上腕骨大結節が鳥口-肩峰アーチの下方に取込まれる必要があり、肩関節上方裂隙の距離がその可動域に影響を与えたためと考えた。今回の骨折群は骨折後慢性期に拘縮を有し、関節可動域訓練中の症例であったが、いずれの可動域においても、AHD、A/H比と有意な相関を認めなかった。これは、AHDやA/H比など裂隙の距離という要因以外に、骨折群では骨折治癒後に器質変性(骨の形状変化など)が残存し、それが可動域に与える影響が大きかったためと考えた。
【まとめ】A/H比の評価は肩関節周囲炎後の拘縮肩例では、関節可動域(機能面)に影響を与える情報として使用できるが、上腕骨近位端骨折例においては、これが当てはまらないと考えた。

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© 2006 日本理学療法士協会
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