理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 266
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骨・関節系理学療法
動揺性肩関節症における上腕骨解剖頚軸回旋可動域
*船曳 久由美立花 孝西川 仁史原田 美由紀塩田 ゆかり柴原 和恵峯 貴文長井 大治亀田 淳松井 晃治金田 光浩黒田 崇之
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抄録

【はじめに】
 動揺性肩関節症(以下LS)は、下方へのloosening、挙上位でのslipping、前後方向への動揺性などの不安定性を認め、疼痛や運動時の不安定感、肩甲上腕リズムの乱れなどを伴う。今回我々はLSの異常可動性について、第40回理学療法学術集会で用いた解剖頚軸回旋可動域測定法に準じて解剖頚軸回旋可動域を測定し、先の学会で述べた正常肩データをもとに、得られたデータと比較・検討を行った。 
【方法】
 正常群70肩とLS群28肩(22.25±9.91度、男:女=9:10)。正常群はさらに、過可動性を認めるもの27肩(31.15±5.93歳、男:女=7:20)(以下Hyper群)と過可動性を認めないもの43肩(31.02±6.05歳、男:女=32:11)(以下NP群)に分類した。この2群とLS群の計3群について、通常の可動域測定を行い、その後第40回理学療法学術集会で紹介した解剖頚軸回旋可動域測定法に準じて各方向へ3回ずつ測定、その平均角度を算出した。なお可動域測定時、関節角度が180度を超えるものは180度とした。
【結果】
 それぞれトータルアークとしての平均解剖頚軸回旋可動域は、NP群122.33±18.46度、Hyper群では、137.59±21.85度。これに対してLS群では162.62±29.35度で、正常肩2群と有意な差を認めた(t<0.01)。また、LS群では可動域測定時、2例に疼痛を認めたが、解剖頚軸回旋可動域測定時には消失した
【考察とまとめ】
 LS群の解剖頚軸回旋可動域は、正常群の平均に比べて大きく、これより関節包内の過可動性が推測される。これは、LSが有する関節包の弛緩性の影響であると思われ、今回の測定でその大きさを数値的にとらえることができたのではないかと考えられる。
 また、解剖頚軸回旋可動域測定時に、通常可動域測定時に認められた疼痛が消失したことについては、先の学会で長井が述べたように、この軸での運動は、大結節が肩峰の下をくぐらないため、ここでの通過障害を回避できたからであると考えられる。
 LSでは、疼痛や不安定感などから肩甲上腕リズムの乱れが起こり、見かけ上の可動域制限が出現することがある。しかし、今回の結果から、解剖頚軸回旋可動域測定することによって関節包内の可動性をとらえることができ、LSの状態をより正確に把握するための一指標として利用できるのではないかと思われる。今回の測定では症例数がわずかであったが、今後症例数を増やし検討を重ねたい。

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© 2006 日本理学療法士協会
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