理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 267
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骨・関節系理学療法
肩関節肢位および角度の違いによる肩関節外旋筋力の特徴
*村西 壽祥山本 昌樹阪本 良太山本 明子足立 春美中川 法一伊藤 陽一
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キーワード: 肩関節, 外旋筋力, 測定肢位
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抄録

【目的】一般的な肩関節の筋力測定において,前額面上の第1肢位や第2肢位で測定されることが多い.これまでの肩関節回旋筋力測定の報告においても,単一の肢位や角度での報告が多い.しかし,肩関節障害として発生頻度の高い90°以上の挙上角度では報告が少なく,異なる肢位や角度間での比較も少ない.また,肩関節機能の評価では,第1肢位や第2肢位だけではなく,様々な肢位での筋力評価が重要と考える.今回,測定肢位,運動面,関節角度が肩関節外旋筋力に及ぼす影響について検討したので報告する.

【方法】対象は健常成人32名(男性19名,女性13名)で,平均年齢23.0±7.0歳,平均体重60.5±11.5kg,平均身長166.0±8.7cmであった.なお,全例とも利き手は右側であった.
 肩関節外旋筋力の測定には,CYBEX NORM/HUMACを用いた.測定肢位は背臥位および腹臥位とし,前額面上および肩甲骨面上での肩関節挙上0°,45°,90°,135°を測定角度とした.そして,各挙上角度において,前額面および肩甲骨面に対する肩関節内外旋中間位,肘関節90°屈曲位にて測定した.測定条件は,5秒間の等尺性外旋運動とし,それぞれの条件にて3回施行した.肩関節外旋筋力は,3回の測定より得られた実測値を体重で除した体重比筋力として算出し,そのピーク値を肩関節外旋筋力値とした.

【結果】背臥位における肩関節外旋筋力は,前額面と肩甲骨面との差は少なく,同一運動面での挙上角度間の差も少なかった.腹臥位における肩関節外旋筋力では,前額面より肩甲骨面で低値の傾向を示した.また,同一運動面においては,前額面での挙上角度間の差は少なかったが,肩甲骨面では高い挙上角度にて低値の傾向を示した.

【考察】背臥位における肩関節外旋筋力は,運動面や挙上角度の違いによる変化は乏しいが,腹臥位では,運動面や挙上角度による変化がみられた.腹臥位にて運動面や挙上角度によって変化がみられたことは,上腕骨と肩甲骨の相対的な位置関係が前額面と肩甲骨面で差が大きくなり,肩関節外旋筋群や肩甲骨周囲筋群が挙上角度によって影響されたものと考える.
 今回の結果から,肩関節の筋力評価を行う場合,肩関節の運動面や挙上角度による変化を考慮し,様々な肢位を選択することが重要であると考える.今後,肩関節障害例に対し,肩関節の運動面や挙上角度を考慮し,肩関節の筋機能評価として重要と考えられる肢位を検討していきたいと考える.


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© 2006 日本理学療法士協会
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