理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 305
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骨・関節系理学療法
硬式野球における投球障害について
ポジション別による検討
*伊藤 直之山崎 孝藤本 昭堀 秀昭勝尾 信一
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抄録

【目的】近年福井県でも硬式野球チームが増加し、高校野球のみならず硬式野球が盛んに行われている。その中で活躍している選手は、中学軟式野球部に入部せずボーイズリーグ等に参加し、早い時期より硬式野球を行なっている。硬式野球におけるスポーツ障害としては、投球障害を起こすことが多く、小学校、中学校から正しい投球フォーム等の指導を行う必要がある。投球障害は、投手経験者の関節障害についての報告が多いが、当院の整形外科においては、その他のポジション経験者も数多く受診している。そこで今回、硬式野球におけるポジション別の投球障害について調査を行ったので報告する。【方法】平成15年4月から平成17年10月に、当院整形外科受診後、投球障害で理学療法の処方が出され、かつ硬式野球経験者の36名(中学生:9名、高校生:27名)を対象とした。調査項目は、1、ポジション、2、障害部位、3、疼痛初発時期、4、投球相での疼痛時期、5、1週間の平均練習頻度と平均総練習時間数とした。比較検討はカイ2乗検定を使用した。【結果】1、ポジション別:投手15名、捕手10名、内野手5名、外野手6名であった。2、ポジション別での障害部位:投手は肩3名、肘12名、捕手は肩8名、肘2名、内野手は肩5名、外野手は肩3名、肘3名であった。ポジション別では、障害部位が投手は肘の障害が有意に多く、捕手、内野手は肩の障害が有意に多かった(p<0.01)。3、疼痛初発時期:疼痛初発時期を硬式野球開始前後でポジション別に比較した結果、有意差は認められなかった(P=0.085)が、投手は硬式開始後に疼痛が認められた者が14/15名であり、捕手は5/10名が硬式開始前から痛みを訴えていた。4、投球相での疼痛時期:コッキング期11名、加速期13名、リリース期8名、フォロースルー期3名、投球相での疼痛無しが1名であった。ポジション別の比較では投球相に違いは見られなかった。5、1週間の平均練習頻度と平均総練習時間数:平均練習頻度は投手6.2日、捕手6.1日、内野手7日、外野手6.6日であり、平均総練習時間は投手25.6時間、捕手26.1時間、内野手30.4時間、外野手23.8時間であり、ポジション別で違いは見られなかった。【考察】今回の調査で、ポジション別では、投手は肘の障害が多いのに対し、野手では肩に障害が多く見られた。野手、特に捕手で肩の障害が多かった理由としては、2塁への素早い送球を行うことや、座った状態で投手への返球を繰り返すなど、投手に比べ体幹の回旋を伴わない投球フォームが強いられるために、肩にストレスがかかっているものと考えられる。また捕手の硬式開始前より疼痛の訴えがあった理由として、小中学時における複数の捕手の育成が不足しているため、一人の捕手に負担がかかることが考えられる。今後、投球障害に対する指導としては投手のみならず野手、特に捕手への指導が重要と考える。

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© 2006 日本理学療法士協会
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