理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 306
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骨・関節系理学療法
社会人男子バスケットボールチームにおける活動報告
外傷・障害対策におけるトレーナーサービスと環境整備
*今井 丈八亀 宏明増島 篤
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抄録

【はじめに】1996年から6年間、専従理学療法士として社会人男子バスケットボールチームに関わりトレーナー活動を行った。日本リーグ所属(企業内チーム)で年間部員数は約14名(外国人選手3名)、平均身長は190cm台である。2001年までに外傷・障害対策として行われてきたトレーナーサービス(以下 、T.S)及び練習時の環境整備の内容と1997年からの5年間の外傷・障害と競技成績に若干の考察を加え報告する。
【トレーナー活動】T.Sの領域は広く、心身の全てに渉る。外傷・障害予防に対するメディカルチェックを始め、理学療法・コンディショニング・テーピング・ストレッチ・応急処置・トレーニング・栄養・メンタルや練習内容にまで及ぶ。トレーニング場及びトレーナー室の整備や各専門スタッフとのパイプ役も行う。 又、 チームドクターとの連携した信頼関係の下、混乱の無い安心した医療環境で、受傷時から競技復帰までの一貫したリハビリテーション体制も可能であった。その為には、現場における見極めと裁量権を与えられた。
【環境整備】環境整備とは施設・設備、人的、科学的、経済的、家族や勤務体制といった選手を取り囲む環境全てが対象となる。特に、T.Sにおいては施設・設備の環境整備がポイントとなる。 コート内においては、温度・照明・フロアー(サーフェイス)の適正化や、給水・応急処置のタイミングも要求される。下肢の外傷・障害が多い競技において、フロアーとシューズの関係は重要であり、特にシューズの選択や足底板に重点をおいた。コート外においては、トレーナー室の整備、及びウェートトレーニング場の設備や内容に関与した。又、選手の状態チェック及びコーチへの報告・検討は随時行われた。
【トレーナー室の整備】当初、近隣寮の9畳程度であったが、練習前後の利便性や選手の動線を考慮し、体育館隣のトレーニング場の一画に約3倍以上のスペースを確保した。治療ベッド3台、テーピングテーブル2台、温熱・寒冷・電気療法器具や足底板作成用グラインダー等を設置した。
【トレーニング設備】フリーウェートを中心に充実させ、能率良く行えるよう、ベンチやラックを3~4名に一台の割合で設置した。又、長身に合わせた器具の特注も行った。
【外傷・障害と競技成績】5年間の確定診断を受けた外傷・障害は58件(1年平均11.6件)であり、下肢に多く、膝関節(25件、43%)、足関節(12件、21%)であった。件数は成績向上時や全国制覇時よりも成績不振の年度に増加傾向にあった。
【まとめ】1)施設・設備の環境整備は、常勝チームには必要不可欠と考える。2)T.Sの運用にはチームドクターを含む人的環境も重要である。3)外傷・障害は競技成績の一因と成りうる。

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© 2006 日本理学療法士協会
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