理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 320
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骨・関節系理学療法
上腕骨近位端骨折のX-P評価と機能予後
*長谷川 雅美山下 導人園田 昭彦
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抄録

【目的】骨粗鬆症を基盤とする骨折の一つである上腕骨近位端骨折は、全骨折中約4~5%を占める。本骨折の約80%は保存療法にて良好な結果が得られるが、年齢・骨折型・社会的背景などから早期回復を目的に手術療法が選択される場合もある。今回、上腕骨近位端骨折におけるX-P評価と肩関節機能について調査したので報告する。
【対象】当院にて治療を施行した15例。男性2例・女性13例、右3肩・左12肩、平均年齢72.8歳、受傷機転:転倒12例・交通事故2例・スポーツ外傷1例、Neer分類2part12例・3part1例・4part2例、手術群11例・保存群4例、受傷後経過期間11.33±11.24ヶ月。
【方法】X-P評価:AHI(肩峰骨頭間距離)を計測。骨粗鬆症度(以下骨指数)をBarnett&Nordin法に基づき計測し、20~30歳代健常成人33例の骨指数平均値を健常値として比較検討。運動機能評価:自他動肩関節可動域、筋力(肩屈筋・外転筋・外旋筋・内旋筋力を徒手筋力計にて計測)、日整会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOA-S、疼痛・総合機能・ADL・ROMの80点満点で算出)を測定。統計処理:上記の計測項目と年齢・経過期間を加えた各値それぞれの相関関係、手術群・保存群間の関係についてそれぞれ危険率5%で行った。なお、X-P上にて骨癒合不全、骨壊死を呈した症例はなかった。
【結果】骨指数:健常値0.38±0.06、骨折群0.26±0.07(保存群0.30±0.03・手術群0.25±0.07)、骨折群・健常群間において有意差あり(p<0.01)。また骨折群の健常値比は70%、うち保存群78%、手術群67%であった。AHI:骨折群8.07±2.34mm(保存群7.5±1.73・手術群8.27±2.57)。相関関係:年齢と以下の項目にそれぞれ相関あり(p<0.05)。骨指数r=-0.63、JOA-S r=-0.58、自動屈曲r=-0.74、自動伸展r=-0.62、自動外転r=-0.69、自動外旋r=-0.71、屈筋力r=-0.69、外転筋力r=-0.69、外旋筋力r=-0.57。またJOA-SのADL項目と骨指数r=0.57、AHI r=0.63に相関あり。なお全項目手術群・保存群間における有意差なし。
【考察】本骨折の受傷原因は青壮年のスポーツ・交通事故等の高エネルギー外傷によるものと高齢者の骨粗鬆症を基盤とし転倒・打撲等の低エネルギー外傷によるものの2つに分けられる。津布久らは術後成績には骨折型より年齢(骨粗鬆症・全身状態・認知症など)による差異が大きかったと述べ、今回の調査においても年齢と肩関節機能に有意な相関を認め、またADL能力と骨粗鬆症・AHIの関係も示唆された。高齢受傷者の理学療法ではX-P上の骨癒合状態や腱板機能を確認し、ADL動作改善を中心に行う必要がある。

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© 2006 日本理学療法士協会
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