理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 319
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骨・関節系理学療法
DPCの乳癌術後への影響
*松尾 健一合志 亜紀子田中 真紀磯邊 眞
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キーワード: DPC, 乳癌, 術後経過
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抄録

【目的】当院は、診療科に女性外来を、病棟に婦人科・乳腺外科でなる女性病棟をもつ「女性にやさしい」急性期型の総合病院である。また現在、病院機能の特化を目指し癌治療にも専門性を発揮している。そのため理学療法では術後の乳癌患者が多い。一方、2003年に特定機能病院に導入されたDPCが、一般病院である当院でも2004年7月から試行されている。そこで今回、DPCがもたらした乳癌術後経過への影響について報告する。
【方法】DPC導入前(2003年7月~2004年6月)と導入後(2004年10月~2005年9月)における各1年間の乳癌手術別件数および理学療法実施件数・紹介率をデータより。DPC導入前後の乳房温存術後・乳房切除術(オーチンクロス術)後患者それぞれ各20名、計80名を無作為抽出し、術後理学療法開始時期、肩関節屈曲角の改善度、理学療法実施期間を調査、比較する。
【結果】1.手術件数の増加(DPC導入前:159件、導入後:182件)、特に乳房温存術件数割合の増加を認めた。〔26%→34%〕2.理学療法紹介率は5%の伸びで、実施件数は30件の増加であった(導入前:145件、導入後:175件)。3.術後理学療法開始時期は、オーチンクロス術においてDPC導入前後での有意差を認めなかったが、乳房温存術では有意差を認めた(DPC導入前4.9±2.0日、導入後3.7±0.9日:P<0.05)。4.肩関節屈曲角度の改善経過では、両術式ともDPC導入前後で有意差を得られなかった(導入後の退院時可動域:乳房温存術175.8±7.3度。オーチンクロス術171.3±11.8度)。5.理学療法実施期間は、DPC導入前が乳房温存術:18.0±7.5日、オーチンクロス術:22.0±4.9日、導入後が乳房温存術:10.5±3.8日、オーチンクロス術:12.9±5.5であり両術式とも理学療法実施期間の著明な短縮を認めた(P<0.01)。
【考察】DPCでは、1回の入院について包括的な料金が定められるため、医療サービスの提供が標準化されるメリットもあるが、入院期間の短縮による過小医療の危険性もはらんでいる。今回の調査結果では、理学療法紹介率が導入前よりも5%増加しており、術後患者のほぼ全例が理学療法を受けていた。特に、乳房温存術後の紹介件数が著明に増えており、これは近年の日本における乳癌手術法の変化に加え、以前まで病棟看護師による指導(いわゆるマンマ体操)だけで十分と判断されていた症例でも、早期退院に向け理学療法の必要性が高まったことと、クリニカルパスによる一貫した医療サービスの定着によるものと考えられた。また、肩関節可動域の改善度においても、DPC導入後、著明に短縮した理学療法期間の中で両術式とも、導入前と同様、良好な成績を得て早期退院が行われたことも、DPC導入による効果であると考えられた。








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© 2006 日本理学療法士協会
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