理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 359
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骨・関節系理学療法
胸椎中位圧迫骨折の発生機序と予防
*立野 伸一中島 伸一池田 さゆり池田 憲治石橋 輝彦高毛禮 敏行後藤 智美
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キーワード: 脊椎圧迫骨折, EMG, 骨粗鬆症
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抄録
【目的】近年、高齢者の健康増進や障害予防のためのリハビリテーション事業が自治体単位で広がりつつある。今回はその事業の大きなターゲットの一つでもあり、既存骨折があると将来の骨折リスクが4~5倍になる脊椎圧迫骨折、その中でも特に見逃されがちな中位胸椎圧迫骨折の発生機序の特徴を筋電図を用い解析。そのデータを基に予防のためのエクササイズについて考察した。

【方法】平成15年2月から平成17年4月に胸椎中位圧迫骨折の診断を受けた患者10例(男性1名、女性9名、平均年齢79歳)の骨折椎体レベル・受傷機転・入院期間・骨塩量を調査、また受傷動作における筋電図学的分析を加えた。骨折椎体レベルは東芝MRI EXCELARTTM MRT- 2001/p2 1.5Tにて評価、骨塩定量はMD(MicroDensitmeter)法にて測定、受傷動作分析はノラクソン筋電図システム(TeleMyo2400,MyoResearchXP)にてA重量物(3kg重錘バンド)の挙上とB転倒想定肋木片手支持動作をEMG8ha(三角筋、僧帽筋上部、中部、下部の左右)と画像の同期計測を施行した。

【結果】骨折レベルは第6胸椎~第9胸椎であり2椎体以上が5症例であった。受傷機転はやや重たい物の持ち上げや移動。または、転倒時に手で支えた(ドアノブをつかんだ)など何れも上肢への負荷を強いられていた。平均入院期間は23.6日、平均骨塩量は1.922mmAl、筋電図によるビデオ動作分析は、Aの重量物挙上、垂直挙上時は目立った所見は見られないものの挙上に加え体幹の回旋屈曲時に左僧帽筋中部301.3uV、右僧帽筋中部30.1uV 、Bの肋木右上肢支持動作時は左僧帽筋中部122.9uV、右僧帽筋中部25.9uVと特徴的なデータを捉えた。

【考察】僧帽筋中部繊維(第7胸椎外側)の最高電位は重量物挙上に加え体幹の回旋屈曲の複合動作時と肋木片手支持の最大体重負荷時にそれぞれ記録され、また左右の電位差も271.2uV、97uVと最大値を示した。このことより、中位脊椎圧迫骨折は単なる上肢負荷によるものではなく、上肢の負荷に加え体幹バランス調整のための左右不均等な脊柱負荷にて発生することが示唆された。以上のことを踏まえ脊椎圧迫骨折予防については、転倒防止リハビリテーションプログラムに加え上肢や体幹のエクササイズにも工夫が必要と思われた。

【まとめ】胸椎中位圧迫骨折は骨粗鬆症を基礎疾患として有し、それに上肢の負荷に体幹の回旋屈曲といった複合動作が加わることにより僧帽筋中部に左右不均衡の最大負荷が生じる。それにより圧迫骨折を呈する事が示唆された。小さな負荷にて骨折を惹起するのはこのような力学的作用が影響しており予防プログラムに考慮が必要である。
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© 2006 日本理学療法士協会
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