理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 426
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骨・関節系理学療法
特殊な靴による変形性膝関節症の予防 第2報
SHM機構付き靴の有効性についての検討
*木下 信博日高 滋紀塚本 裕二山崎 伸一平川 和生松永 勝也小野 直洋酒向 俊治志堂寺 和則
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抄録
【目的】 
整形外科病院におけるリハビリ診療の中で中高齢者において変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は頻繁に見られる疾患である。そこで我々は(株)アサヒコーポレーションと共同し、九州産業大学大学院の松永教授らとの研究で、歩行立脚前期のscrew home movement(以下SHMと略す)を正常化する靴(回転トルクを発生させることが可能なスクリュー状の弾性体を靴底に取り付けた靴)SHM靴を試作した。
そこで、この靴の有効性を確かめる為に、平成17年3月より当院受診の患者さんを対象とし、同意を得た上で6ヶ月間の実履き試験を実施し、若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象及び方法】 
対象は当院に受診された患者さんで、内側型変形性膝関節症を持つ40歳以上の女性23名とした。尚、全員膝に何らかの愁訴を持っていた。使用した靴はSHM1mm・SHM4mm・SHMなしの3種類とし、被検者を無作為に割り付ける目的で、誕生月で3群に分けた。内訳は、SHM1mm群9名、SHM4mm群8名、SHMなし群6名、であった。評価は、QOL・膝関節機能・BMI等の変化を、1ヶ月目・3ヶ月目・6ヶ月目で初回時と比較検討した。膝関節機能はLequesneの重症度指数、QOL評価はSF-36(国民標準値に基づいた指数)、BMI等は高精度体成分アナライザーIn Body3.0(バイオスペース社)を使用した。
【結果】 
各群の平均年齢は、各群間で差は認められなかった。Lequesneの重症度指数における疼痛点数は、SHM4mm群で著明に低下し、有意に差が認められた。SF-36評価での結果では、各群とも各項目で増加傾向が認められた。特にSHM4mm群で、BP:体の痛み、MH:心の健康において、1ヶ月目で急激な改善があった。インボディーでの結果では、筋肉量は増加傾向にあり、体脂肪量は低下傾向がみられたが、有意な差が見られなかった、フィットネススコアーでも各群で増加傾向はあったものの群間での差は認められなかった。BMI指数では各群とも、低下傾向はあるが、有意な差は見られなかった。
【考察】 
今回の検証では、全ての被検者にできるだけ多く歩行するように積極的に勧めた。その結果、膝関節の正常な動きであるスクリューホーム運動を誘発する、SHM4mm群で早期の疼痛改善や心の健康の改善が有意に得られたことは、この靴が早期の変形性膝関節症の治療方法として十分に機能することが証明された。またOA患者さんでこの靴が実際に歩行時の下腿内旋を抑制していることを、昨年の9月に実施された生体医工学シンポジューム2005でも示した。靴に対する感想としては、SHM4mm群では、膝の愁訴に対する具体的な感想が得られた。
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© 2006 日本理学療法士協会
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