理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 454
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骨・関節系理学療法
ピドスコープによる動作解析の試み
足底接地面積の違いによる昇段動作の解析
*鈴木 順一小枩 武陛岸本 眞久利 彩子藤平 保茂藤野 文崇浅野 達雄
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抄録
【はじめに】ピドスコープとは計測ガラス面直下に配置した鏡を介し,随時足底の接地状態を評価する装置である。臨床では静止立位の足底接地状態や扁平の程度を測る目的で用いられているが,基本的には静止立位における足底の接地状態の計測が主となり,動的な解析には用いられていない。そこで本研究は,動的な足底接地状態を測定する機材としてのピドスコープの有用性を検討した。
【対象】本研究に同意が得られ,下肢に障害がない2名の男性を被検者とした。被検者1:年齢28才,身長175cm,体重60kg,足長253mm,舟状骨結節高47mm,アーチ高率(大久保)19%。被検者2:年齢21才,身長182cm,体重67kg,足長280mm,舟状骨結節高37mm,アーチ高率13%であった。
【方法】1)動作課題:蹴上げ20cmの階段の2段目にピドスコープを設置し,各被検者共に至的速度で5回の交互昇段動作を実施した。2)動作記録:ピドスコープの鏡面側方1mにデジタルムービーカメラ(SANYO Xacti)を配置し, レンズは望遠側とし昇段動作における右足底の接地状態を秒速30フレームで録画した(mpeg4画像)。3)画像解析:画像解析ソフトを用いmpeg4画像をBMP画像に分割(15 fps)し,モノクロ2値化処理後Scion Imageで昇段時の足底接地面積を測定した。4)分析方法:被検者2名における5回の昇段動作中,蹴り出し要した時間の最小と最大を除いた接地面積の3回平均を求めた。片脚立位における足底接地面積と土踏まず部の投射面積の合計を各個人の100%接地面積とし各測定面積を正規化した。正規化した接地面積を経過時間で微分し,%接地面積変化率より各被検者の近似直線を求めた。
【結果】大久保のアーチ高率による分類では,被検者1が正常アーチ,被検者2がアーチ低下に分けられた。昇段における接地時間は被検者1が0.7秒,被検者2は1.3秒であった。蹴り上がりにおける接地面積は被検者1が接地0.2秒経過で約60%の最大接地面積に達し,被検者2は0.5で73%の最大接地面積に達した。%接地面積変化率より近似直線y=-0.09x+5.6(被検者1),y=-0.02x+2.5(被検者2)が求められた。
【考察】ピドスコープによる画像情報は,圧力分布等は含まれない2次元平面における面積情報に過ぎない。しかしこの度の検討で,内側縦アーチの高さの違いにより,昇段蹴り出し動作における面積変化率に違いが確認された。このことよりピドスコープによる面積情報からも足部形状の違いや,蹴り出し動作の特徴を推察する一手段となる可能性が示唆された。

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© 2006 日本理学療法士協会
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