理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 539
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内部障害系理学療法
緊急冠動脈バイパス術後の心臓リハビリテーションに影響を与える阻害因子の検討
緊急群と待機群の比較
*上原 さやか徳田 雅直藤崎 浩行倉田 篤南淵 明宏
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抄録
【はじめに】虚血性心疾患の急増とともに冠動脈バイパス術(以下CABG)の適応も増加傾向であり、それらに対する心臓リハビリテーション(以下心リハ)の報告も多い。しかし、緊急症例に対する心リハの阻害因子や進行状況の報告は少ない。今回、当院でCABGの適応となった緊急手術群(以下;緊急群)と待機群に分け、心リハに影響を与える阻害因子を検討したのでここに報告する。
【対象と方法】対象は当院で2004年12月から2005年9月の10ヶ月間にCABGを行った76例(男/女=51/25,平均年齢64.6±9.5歳)、緊急群11例(AMI;5例UAP:6例)、待機群65例とした。なお、透析患者および血行動態が安定せず3日以上人工呼吸器からの離脱が困難であった症例は除外した。心リハ開始日は術後血行動態が安定し、医師の指示のもと、当院の開心術後心リハプログラムに準じて開始した。各症例の手術から退院までの経過をカルテより後方視的に調査を行い、緊急群および待機群にわけ、術式、年齢、グラフト本数、術前EF、手術時間、術中出血量、抜管時間、手術から端坐位までの時間(以下;臥床時間)、ICU滞在日数、心リハの進行状況、術後在院日数を検討した。分析はt-検定を行い、危険率5%有意水準とした。
【結果】緊急群CPKmax(AMI/UAP=471.8±569.5/370.3±449.8IU/l:n.s)であった。2群間において、年齢、グラフト本数、術前EF、手術時間、術中出血量に有意差は認められなかった。しかし、抜管時間(緊急群/待機群=621.8±393.2/262.5±242.4min.p<0.01)で有意差を認め、臥床時間(緊急群/待機群=2866.3±859.9/2023.1±646.5min.p<0.01)、ICU滞在日数(緊急群/待機群=2.3±0.8/1.2±0.5day.p<0.001)で有意差を認めた。心リハ進行状況(立位リハ緊急群/待機群=3.0±2.4/1.2±0.5day.p<0.01)、トイレ歩行(緊急群/待機群=4.2±4.0/1.3±0.5day.p<0.01)、100m歩行(緊急群/待機群=6.6±6.6/2.9±0.9day.p<0.05)となった。術後在院日数(緊急群/待機群=18.5±10.3/11.6±3.4day.P<0.05)となり、自宅退院率(緊急群/待機群=88.9%/100%)となった。
【考察】緊急群では人工呼吸器からの抜管が遅れる事により荷重側肺に無気肺を生じ、酸素化が改善する事に時間を要した。また、離床が可能となってからもdeconditioningが継続し立位保持が困難となる症例もあり、早期からbed sideリハが必須であると思われた。今回の結果より、術後の呼吸管理から理学療法士が関与ることが重要であり、ひいては早期離床の鍵であると考えられる。
【まとめ】緊急群と待機群の心リハ進行に影響する阻害因子は抜管時間と臥床時間であった。
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© 2006 日本理学療法士協会
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