理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 540
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内部障害系理学療法
当院心臓血管外科術後における歩行能力の獲得について【第1報】
*緒方 孝河野 洋介中尾 藍子渡邉 哲郎井手 睦安永 弘
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抄録
【目的】心臓血管外科手術後のリハビリテーションにおいて、術後早期介入・早期離床が重要である。近年、在院日数の短縮化が進む中、術後より退院までの期間を早期に予測することが求められるようになった。そこで今回、術後における歩行距離とPhysiological Cost Index(以下PCI)の評価を検討することで、術後における運動機能の回復過程の推測を試みた。
【対象】当院心臓血管外科において平成17年5月~9月の間に開胸・開腹術を施行し、自宅退院した症例で、術前に高度な運動障害がなく、術後合併症のない10名(男性6名、女性4名、平均年齢62±17歳)を対象とした。
【方法】術後、歩行開始となった段階(平均5.9±2.4日)より、1w毎と退院直前の最終時に3分間の歩行距離とPCIを測定し、各期間における歩行距離とPCIについての比較、検討を行った。PCI評価における歩行時の心拍数の測定には、帝人ファーマ株式会社製酸素飽和度モニタPULSOX‐M24を用いた。統計処理にはt検定を用い、P<0.05をもって統計学的有意とした。
【結果】病棟での起立開始までの日数は平均3.9±1.9日、歩行開始までの日数は平均5.9±2.4日、手術より退院までの日数は平均21.2±5.9日であった。3分間歩行距離の平均は、(開始:1w:2w:最終・131.6±40.6m:159.8±44.8m:156.4±39.8m:175.5±39.7m)で開始と最終の間のみで有意な差が認められた(P<0.05)。PCIの平均は(開始:1w:2w:最終・0.34±0.12:0.35±0.19:0.25±0.21:0.29±0.19)で各期間において有意差は認められなかった。
【考察】歩行距離については開始と最終の間のみに有意差が認められた。また、運動時のエネルギー消費量の指標として用いられているPCIについては各期間での有意差は認められなかった。歩行距離改善の要因としては、(1)術後起立開始までの臥床期間中に床上での理学療法を施行している為、下肢の筋力が維持されていたこと(2)術後の創部痛を考慮した動作指導などにより早期離床が可能となり、二次的障害が予防できたこと(3)運動負荷を考慮した運動療法を施行したことで効率よく運動耐容能が改善したことが考えられる。また、(1)開始と最終時の間で歩行距離の有意差は認められたが、術後歩行開始より1wの時点からは有意な歩行距離の向上は認められなかったこと(2)歩行開始時から最終時までにPCIから表れるエネルギー消費量で有意差が認められなかったことにより、術後歩行能力が自宅退院レベルに到達するまでに、歩行開始より1w間の理学療法で可能であったと推測される。今後は、整形疾患や脳血管障害などの合併症のある症例の検討や年齢や術式による検討などを行っていきたい。
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© 2006 日本理学療法士協会
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