理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 549
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内部障害系理学療法
心疾患患者における身体活動セルフ・エフィカシーに対する日常生活動作トレーニングを併用した回復期プログラムの検討
*井澤 和大渡辺 敏岡 浩一朗平木 幸治森尾 裕志長田 尚彦大宮 一人
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抄録

【目的】身体活動セルフ・エフィカシー(SEPA)は, 健康関連QOLや運動の習慣化に影響する要因の一つとされる. 先行研究(井澤ら,2005)において我々は, 筋力トレーニング(筋トレ)と歩行運動を主体とした回復期プログラムが歩行に関するSEPAの向上に影響を与えることを報告した. SEPAは歩行のみならず階段・重量挙げなどを含む日常生活動作(ADL)に密接した尺度からなるが, 当院での従来の運動療法にADLトレーニングを併用した回復期プログラムがSEPAにおよぼす影響については明らかではない. 本研究の目的は心筋梗塞(MI)患者を対象とし, 従来の運動療法にADLトレーニングを併用した回復期プログラムがSEPAに及ぼす影響について検討することである.
【方法】
1. 対象 当院ハートセンターにMIで入院後, リハ部に依頼があった106例中,急性期プログラムを終了しかつ発症後1か月(T1)時点での心肺運動負荷試験(CPX)を施行した69例を対象とした.CPX終了後,筋トレと歩行運動に後述するADLトレーニングを併用したADL-EX群(n=45)とCPXのみを希望したcontrol群(n=24)の2群に選別した. 2. 属性と病態に関する情報
属性と病態に関する情報は, 診療記録より調査した.
3. SEPA 本研究ではSEPA尺度(2002, 岡)を用いた.この尺度は, 歩行,階段,重量挙げ,腕立て伏せの4つの身体活動に対して5つの活動負荷の階級(強度,時間,回数)を設定し,0%から100%で回答されるサブスケールからなる. 本研究では, 各項目を0から100点に換算し,上肢・下肢活動に関するSEPAの2項目に分け,その平均値を求めた値を使用した. なおSEPAの調査は,T1から発症3か月時点(T2)でのCPX終了後に施行した.4.回復期プログラム 回復期プログラム時の運動処方は, T1時のCPXの結果に基づき,嫌気性代謝閾値(AT)時心拍数±5を目標とした. 内容は, 上下肢の筋トレ, 歩行運動に加え,ADL-EXとして, 階段昇降および重量挙げを施行した.またプログラム中は, 個々の患者に対し運動時の血圧・心拍数など生理学的反応のフィードバックを随時行った. 実施期間は T1からT2の8週間で,頻度は週1から2回である.5.分析
統計学的手法としては,χ二乗検,t検定および二元配置の分散分析を用いた.統計学的判定の基準は5%とした.
【結果】1.属性および病態に関する情報は2群間で差はなかった.2.上肢・下肢活動に関するSEPAはADL-EX群はcontrol群に比し,T1からT2にかけて有意に向上した(上肢活動,64.5 v.s.70.9→83.1v.s.71.5, F=21.3, p<0.05, 下肢活動, 65.6 v.s.70.6→74.3v.s.66.6,F=13.5, p<0.05).
【考察】
属性および病態に関する情報は2群間で差はないことから,これらがSEPAに及ぼす影響は少ないものと考えられた.SEPAはADL-EX群はcontrol群に比しT1からT2にかけ有意に向上した.以上より本研究で用いた回復期プログラムは, 上肢・下肢活動双方に関するSEPAの向上に影響を及ぼすものと考えられた.

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© 2006 日本理学療法士協会
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