理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 981
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生活環境支援系理学療法
介護予防事業としての保健事業の展開について
*武田 士郎金指 巌山本 美和横内 亜紀岡島 直子
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抄録
【目的】
介護保険制度は実施後5年を経過し大幅な制度改革とともに、予防重視システムへの変換が必至となり、従来から実施してきた保健事業においても、介護予防を視野に置いた事業への転換が図られようとしている。本市では現在、老人保健法による機能訓練B型(以下健康教室)を介護予防事業として位置付け、高齢者の運動による機能維持・向上を目指し実施している。今回の制度改正にあたり、保健所の事業として実施する介護予防活動の方向性および目的を再検討するため、参加者に対する調査を実施したので報告する。
【方法】
平成17年7月時点での健康教室参加者(286名、男性39名、女性247名、平均年齢70.8歳)に日常生活の活動性に係るアンケート調査と、身体機能に係る調査として下肢の筋力測定を行った。アンケートの内容は、参加期間、健康状態の他に外出頻度、運動の実施状況等、計11項目で回答を得た。下肢の筋力測定は左右の等尺性膝関節伸展筋力を、アニマ社製徒手筋力計(μTas F-1)を用いて1回の試行の後に測定し、体重測定後に大腿四頭筋/体重比を算出した。
【結果および考察】
参加者の大部分は比較的、健康状態が安定し、ほぼ毎日外出している者が半数以上を占めており、活動的な高齢者が多く参加していた。
 教室の参加により週1回以上の運動機会を持つようになった者は54.5%、指導した運動を自宅でも実践している者は91.9%であり、教室が運動の継続実施に好影響を与えている事が伺えた。
 参加前と比べての意識・身体状況の変化は「運動や健康の知識が増えた」「からだが軽くなった」等の回答が多く、参加者自身が運動の実践について積極的な意識を持つ者が多かった。
 大腿四頭筋/体重比の平均値は右41.5%、左39.3%であり、年代別に見ると高齢になるにつれて低下する傾向にあった。片足か両足が体重比30%未満であった者は19.2%であり関節疾患や変形等によって左右差のある者も多くみられた。また両足の体重比30%未満であった者は9.1%存在し、現在は健康で自立した生活を送り、定期的な運動習慣を持つ一般高齢者の中にも、要介護状態に陥るリスクを持つ者が相当数存在していることが示唆された。
これらのことから今後の保健事業において、一般高齢者の比較的健康な時期からも介護予防を視野に入れた活動が必要であると考えられる。
【まとめ】
現在、本市の要介護認定の受給者は約2万人、自立・非該当は約8万人、ハイリスク者は約5千人と推計される。要介護状態を予防するには原因の大部分を占める生活習慣病と老年症候群の予防が重要であり、虚弱等の高齢者に対するアプローチだけでなく、圧倒的多数を占める自立している一般高齢者に対する、健康維持を含めたポピュレーションアプローチとしての活動も同時に実施していくことが重要である。
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© 2006 日本理学療法士協会
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