抄録
【目的】
介護保険制度の開始以降、その推進のためにリハビリテーション(以下、リハ)サービスは大きな役割を担っている。理学療法士(以下、PT)に対しては介護予防などのニーズが高まる中、介護認定において要支援、要介護1に相当する人が200万人を超え、来年度の介護保険法の改正では新予防給付の導入により介護予防がさらに推進される。しかし対象となる高齢者のリハに対する意識、介護予防に取り組む姿勢は様々であり、モチベーションという壁が現実的に要介護度の改善を阻んでいる状況も覗える。そこで我々は、現在施設でデイサービスあるいはデイケアを利用している高齢者を対象にリハに関する意識等についてアンケート調査を行い、過去に行った同様の調査と比較検討した結果、若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】
地域リハが推進され定着してきた頃(1993~1994年)、大阪府内のカルチャーセンターを利用する高齢者(55名;平均77.4±5.4歳)を対象に行ったアンケート(調査1)と、2005年1月~9月に岡山県内の施設でデイサービスあるいはデイケアを利用する高齢者(125名;平均78.3±6.8歳)を対象に行ったアンケート(調査2)の結果を検討した。調査2の対象者は要支援が55名、要介護1が36名、要介護2が4名、要介護3が6名、認定なしが24名であった。
アンケートは共通で、年齢・性別・リハ経験(病院名)・リハとはどういうことをするか?・PTという職種を知っているか?の5項目から成った。リハ経験の有無、リハについての意識(返答内容を幾つかのカテゴリーに分類)、PTの知名度について全体との割合を算出し、独立2サンプル母比率検定にて調査1と2の比較を行った(p<0.05)。
【結果と考察】
リハ経験について、「ある」は調査1では25%、2では32%であったが、整骨院などの返答を除くと調査1が16%、2が19%であった。リハについての意識では「運動療法(ADL・OTの内容含む)を行う」に含まれる内容は調査1が16%、2が18%、「物理療法(温熱、マッサージ、牽引等)を行う」という内容は調査1が25%、2は23%、「それ以外(鍼灸、整体等)」は調査1が5%、2では6%であり、「知らない」は調査1では58%、2では55%であり、全てにおいて有意差は認められなかった。リハに関する誤解(東洋医学系の治療等)もあり、また運動療法よりも物理療法の内容が多く、運動に対するコンプライアンスも良いとは言えず、運動が身近な存在ではないことも示唆される。またPTの知名度は調査1では7%、2では15%と有意差を認めた。PTの知名度が増えつつあるという幾つかの報告と一致するが、リハの理解がそれに伴っていないことが問題である。今後、介護予防に取り組む上でこれらの結果は重要なポイントになるだろう。