理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1022
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生活環境支援系理学療法
在宅健常高齢者における外出頻度低下の特性
*小林 量作園田 裕久姉崎 静記武藤 圭子
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抄録
【はじめに】
 高齢者の閉じこもりは廃用症候群を生じ寝たきりに連なるため,その予防対策が急がれている.閉じこもりのスクリーニング尺度としては外出頻度が妥当である.本報告の目的は,在宅健常高齢者の外出頻度に注目して,外出頻度低下者の特性を検討することである.
【対象及び方法】
 対象は,新潟県旧加治川村における65歳以上の全住民1,768人(高齢化率24.3%)である.方法は,対象者全員にアンケートを郵送法で行った.統計的分析は,外出頻度と各設問回答とをχ2検定で行った.危険率5%未満を有意とした.
【結果】
 1.有効回答者は1,494人,有効回答率は84.5%であった.この内,外出頻度に関する有効回答者1,441人(男591人,女850人)を分析対象とした.年齢は65歳から99歳まで平均74.8±7.6歳であった.
 2.外出頻度別では,「毎日」が450人31.2%(男56.4%,女43.6%),「2から3日に1回以上」が446人31.0%(男39.9%,女60.1%),「1週間に1回程度」が330人22.9%(男27.3%,女72.7%),「ほとんどない」が215人14.9%(男32.1%,女67.9%)であった.女性は男性より外出頻度が低下していた(p<0.001).
 3.外出頻度が,「ほとんどない」(閉じこもりに該当)割合は,65歳~69歳は4.2%,70歳~74歳は7.8%,75歳~79歳は14.9%,80歳~84歳は28.0%,85歳~89歳は43.7%,90歳以上53.3%であった.年齢とともに閉じこもり者が増加していた(p<0.001).
 4.外出頻度別の転倒経験率は,「毎日」が17.2%,「2から3日に1回以上」が22.8%,「1週間に1回程度」が28.6%,「ほとんどない」が39.6%であった.外出頻度が低下していると転倒率が高かった(p<0.001).また,外出頻度の低下で転倒時の外傷が多く(p<0.001),転倒後の生活変化(狭小化)が多かった(p<0.001).
 5.外出頻度低下と関係していた日常活動は,横断歩道を青信号の間に渡れない,1km持続歩行ができない,片足立ちでくつ下をはけない,タオルをきつく絞れない,よくつまずく,転倒不安のため外出を控える,であった.
【考察】
 安村によれば閉じこもりは「月に1から3回は,外出する」または「ほとんど,または,まったく外出しない」場合に判定される.全対象者の14.9%がこの閉じこもりであり,65歳以上を対象とした先行研究の10%から16%とほぼ一致する.外出頻度低下は年齢とともに上昇し,外出頻度が低下しているほど転倒経験有り,転倒時の外傷,転倒後の生活狭小化,転倒不安で外出を控える,運動能力の低下している者が多い.これらのことから,外出頻度の低下・閉じこもりは,年齢が高く,転倒経験・転倒不安と関係があり,日常活動低下の特性を持つといえる.

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© 2006 日本理学療法士協会
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