抄録
【はじめに】わが国の社会問題の一つである在宅介護に対し、その問題解消を図る為2000年4月に介護保険制度が創設された。その中で各種サ-ビスを利用した在宅生活が推奨され、訪問リハビリテーション(以下リハ)を含めた訪問サ-ビスの利用が増加した。しかしその為に外出頻度が減り、閉じこもりとなってしまうケースも見られ、訪問の在り方に疑問を感じる事も少なくない。そこで今回は地域在住高齢者にアンケート調査を行い、外出頻度の関連要因を探るとともに各種サ-ビスのあり方や今後の課題について検討した。【対象と方法】調査対象者はK市K区在住で訪問・通所サ-ビス利用者、地域B型リハ参加者、高齢者向け住居入居者のうち著名な認知症や視力障害、書字困難がない者約100名とした。質問項目は年齢、性別、介護認定の申請有無と要介護度、外出頻度、家屋・周辺環境、同居家族の有無と家族構成、ADL、生活機能、生活満足度、QOL(SF-36)であった。調査にあたっては、個人情報の守秘を記載し返却は個人の自由とした。平成17年4月から5月に用紙を配布し自己記入で回答を依頼した結果、70名(平均年齢77.3歳:有効回答率75.3%)から有効な回答を得た。回収後、介護保険の介護認定に基づき要介護群と自立群に、外出頻度別で外出群と閉じこもり群に分類し検討した。デ-タ解析は、調査項目間の相関にはスピアマンの順位相関を、両群の比較にはマンホイットニ-検定を用いた。【結果と考察】対象者全体のQOL下位項目の平均値は同年代の国民標準値とほぼ同等であった。また、自立群と外出群では一項目が標準値を上回り他はほぼ同等であった。しかし、要介護群と閉じこもり群では標準値より全項目が低値であり、身体的QOLのみならず精神的QOLも低下していた。また、外出群と閉じこもり群との間で家屋・周辺環境、同居の有無による統計学的な差はなく、これは外出に影響すると考えられる家屋や周辺環境、家族の介護が、必ずしも外出を阻害する要因ではないことを示していた。外出頻度とは、ADL、生活機能、生活満足度、QOL下位項目との間で有意な正の相関がみられた。したがって、外出頻度が少なければ、ADL自立度や生活機能など身体機能だけでなく、生活満足度やQOLといった心理・社会性も低下することが示唆された。閉じこもりは寝たきりになる途中段階とも言われている。廃用性症候群を予防する為にも外出を促すことは重要で、寝たきり防止の為には早期から心理面や社会性の評価を行い、身体機能が高い間に外出する機会づくりをすることが必要と考えられた。したがって、訪問リハでは身体機能・能力の評価、福祉用具の選択と指導を行う一方で、同時に心理面・社会性の適切な評価を行い、ADL改善後の生活までを考慮した各種サ-ビスの提案・提供することが重要であると考えられた。