理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1064
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生活環境支援系理学療法
退院後家庭訪問調査経験後のセラピストの意識調査
回復期における在宅復帰支援業務に与える影響
*蛯原 美都紀田中 純子坂口 美香兼子 さち中井 康司篠澤 毅泰渡部 美和子
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抄録
【目的】当院では患者サービスの一環とセラピストの教育を目的として、入院中に家庭訪問を実施し承諾が得られたケースに対し退院後家庭訪問調査(以後、退院後訪問)を2003年10月より施行している。今回、退院後訪問で得られた経験が、回復期において理学療法士が在宅復帰支援業務に従事する際の意識にどのような影響を与えているのかを調査したので報告する。
【方法】当院の回復期病棟経験2年目以上の理学療法士23名に対し、1.退院後訪問が自分にとって有用であったか・またその理由、2.住宅改修・福祉用具の提案で考慮するようになった点、3.退院後の生活の提案で考慮するようになった点、4.退院前指導で考慮するようになった点、以上4つの項目でアンケート調査(選択式に自由記載を加えたもの)を行い検討した。
【結果】アンケートの有効回答数は23名中18名(回答率85%)であった。1.退院後訪問が自分にとって有用であったか:「有用である」との回答は100%であった。その理由として「提案した住宅改修や福祉用具の実際の使用状況が確認できる」「患者さんと再会できる」が最も多く、「サービスの利用状況」「ケアマネージャー(以下CM)との関わり」などは関心が少なかった。2.住宅改修・福祉用具の提案で考慮するようになった点:「提案のバリエーションを増やす」の回答が多く、「患者さんの全身持久力」の回答は少なかった。3.生活の提案で考慮するようになった点:「機能変化の予測」「ご家族の負担軽減」「ADL以外に実生活で行う動作」「病院と家での行動パターンの違い」という回答が多く、「患者さんの全身持久力」の回答は少なかった。4.家族指導で考慮するようになった点:「指導時間の増加」「指導時期を早める」「介助者の負担」「介助者の理解度や協力度」「指導内容の伝達方法」の回答が多かった。
【考察】入院中に退院後の生活をイメージしながら住宅改修や福祉用具の提案を行うことは重要であるが実際は難しく、退院後訪問で得た経験は大きな糧となっていると思われる。しかし、経験年数の浅いセラピストは患者さんの生活全般に目を向けることが困難で、その中でも特に在宅生活でキーになるCMへの関心が低い傾向がみられた。その為、チームアプローチや円滑な在宅生活再開への連携という観点においても関心の低い部分に対するフィードバックの充実が今後の課題である。また、退院後訪問は退院後1-3ヶ月に行っているため長期的予後予測の経験としては不十分であることから、患者さんの継続的なフォローアップも必要になると思われる。

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© 2006 日本理学療法士協会
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