抄録
【はじめに】
当院は平成17年5月より休日を含む年間365日のリハビリテーション(以下、リハ)体制を施行した。今回、同年7月現在、当院に所属するセラピスト40名(理学療法士(以下、PT)20名、作業療法士15名、言語療法士5名)を対象とし、選択式と自由式でアンケートを実施した。そこで、「365日リハ体制」導入後のメリット・デメリットを検討し、PTの病棟への取り組みについて見直した結果を報告する。
【アンケート結果と検討】
「365日リハ体制」になって患者に対してメリットがあると感じたセラピストは全体の75%であった。また、「365日リハ体制」になって患者に対してセラピストは、“活動レベルの向上”“日々の変化を把握できる”“家族とのコミュニケーションの増加”を感じている一方で、“メリハリがない”“曜日感覚がない”“リハに対する患者の依存心増強”“患者の外出・外泊頻度の減少傾向”を感じているという意見が多かった。そこで、リハ提供の仕方に改善すべき点がないか検討した結果、新体制導入後、“休日もPT室を開放しているためにPT室中心のリハになっている”“病棟での動作練習の機会が減少している”という意見が挙がった。休日もリハを行うという新体制を有効利用し家族指導や、実際の病棟生活での基本・ADL動作の評価とアプローチを充実させるという忘れかけていた原点に振り返り、取り組みを実施した。
【取り組み】
具体的には、移乗・歩行動作の家族指導や入浴のない日曜日を利用し自宅の浴室を想定しての入浴動作練習である。家族指導に関しては、休日にしか面会に来ることができない家族へも指導が可能である。また、家族介助での介助量を定期的にチェックするために評価表を作成した。入浴動作練習に関しては、前もって患者・家族に自宅の状況を情報収集しておき、その環境にできるだけ近い状況を作り動作評価・練習を行った。これらの取り組みを通して、“実際の病棟生活内での患者の機能的・応用的な評価ができアプローチ内容の再検討のきっかけとなった”“家族とのコミュニケーションが増加し、生活背景がイメージしやすくなった”などの意見が挙がった。さらにPT自身、病棟ADL練習や家族指導に対する意識の向上にも繋がった。
【まとめ】
今回、新体制導入後に我々が感じた問題点から改善策を考え、家族指導を含む実際の生活を想定したリハ提供を行った。これらは患者・家族・PTのコミュニケーションの増加だけでなく、患者の活動範囲の拡大、患者の再評価、アプローチ内容の再検討に繋がった。今回、休日リハによるリハ提供頻度の増加だけでなく、患者の退院後の生活を想定した質の高いリハ提供の重要性を改めて感じた。今後、この取り組みを通じて、いつでもどこでも患者の生活が充実するようPTとして病棟へ介入し、チームで連携をとり実践していきたい。