抄録
【目的】埼玉県総合リハビリテーションセンター内にある身体障害者更生相談所ではさいたま市を除く全県を対象に、補装具や更生医療の相談・身体障害者手帳などの判定を行っている。車いす作製目的の補装具相談では医療的検査・診断や生活場面の評価を必要とする場合、判定医は定期的な医療機関への受診が無い場合に限って病院部門への入院を勧め、検査・評価をして処方することがある。今回、更生相談に来所し、シーティング目的で入院となり、理学療法処方のあった4事例を通して、今後の課題について検討する。
【事例】事例A:56歳・女性・脊髄小脳変性症・関節可動域制限著明・日常生活活動全介助・車いす乗車姿勢不良・嚥下障害。事例B:57歳・女性・脳性麻痺・車いす乗車姿勢不良・嚥下障害の疑い・チルトリクライニング車いすを希望。事例C:25歳・男性・脳性麻痺・日常生活活動全介助・褥瘡・電動車いすと介助型車いすの二台給付を希望。事例D:70歳・男性・脊髄損傷・肥満・下肢拘縮により車いす不適合・褥瘡・自力駆動を希望。
【結果】事例A:簡易発泡モールドで試行してから作製へ。事例B:介助型車いす希望であったが駆動能力があると判断して片手駆動型へ変更する。事例C:家族介護者が高齢のため援護体制について市福祉と連携し情報提供する。事例D:妻の単独操作で車いす乗車介助を行えるよう福祉用具を導入する。これらの処方案について介護者側の希望とは違う仕様にした理由や使用方法の説明は、処方日に写真や試乗車等を用いて行った。
【考察】更生相談により車いすなどの補装具を作製するということは、公的資金を使用して作製するということであり、対象者が欲するものをすべて給付するのではなく、必要なものをより効率的に選択することが重要である。医師をはじめ我々関わる専門職は対象者にとってより適切なものを選択肢として提供できなければならない。家族、介護者からの希望に関しては、入院により本人の身体機能面の問題と介護上の解決すべき問題について時間をかけて整理し、その後他職種間との調整で本人・介護者の双方にとって適切な処方案を作成することが出来たと思われる。特に事例B・Dに関しては身体機能と動作能力を初回診察のみで把握することは難しかったが、入院中の評価により一部介助で可能な動作があることが分かり、出来る動作を活かせる車いす処方案を作成することが出来た。入院中の専門職の関わりが有効であったと思われる。
【まとめ】更生相談から入院し、車いす姿勢の評価、処方案を作成した事例を紹介した。処方から作製、適合までには期間を要すため、現状では車いすの適合や使用状況を評価することは困難である。今後は、完成した補装具の適合と使用状況評価のためのフォローアップについて、作製業者や日頃関わっている支援機関と連携し、来所・訪問等の体制作りが必要である。