理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 910
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教育・管理系理学療法
理学療法学生の動画観察時における視線軌跡と動作分析技術の習熟度との関連について
*岩月 宏泰岩月 順子
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キーワード: 動作分析, 視線軌跡, 教授法
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抄録

【目的】動作分析は理学療法の中で核となる技術である.理学療法学生(以下,学生と略す)に学内教育でこの技術の意義,理論,手順などを教授し,健常者を対象とした反復練習させても,臨床実習場面では現象を分析することに苦慮する学生は多い.この技術は,様々な動作場面からその患者の動作の特徴や規則性を見出すものであるため,ある程度熟練した予測能力を必要とする点は否めない.しかし,学生の多くは予測に基づいて分析できないというよりも,必ずしも根拠があるとはいえない1つの予測に基づいて現象を分析するため,多くの情報に理論的な意味付けが出来ないことが原因といえる.そこで,本研究では学生に有疾者の諸動作を観察・分析させた際の視線軌跡から,動作分析技術の習熟度について検討した.【方法】被験者は研究主旨・内容を理解し同意した学生6名及び免許取得後10年以上の理学療法士2名であった.方法は被験者の頭部にナック社アイマークレコーダ(EMR-8)を装着させ,眼前1.5mに設置されたTV画面(21インチ)を注視させた.課題として,予め収録した脳血管障害後片麻痺者の起居動作及び歩行の動画を観察・分析させた後に分析結果のレポートも提出させた.なお,動画観察時の視線軌跡の解析には経時的停留データ(停留データ軌跡を視野座標に描画したもの)及び停留回数(視野座標に停留した累積数)を採用し,レポートの完成度との関係及び学生と理学療法士について比較した.【結果と考察】1)視線軌跡の分析結果:学生の動画観察時の視線軌跡は対象者の特定の部位に留まり,全身を俯瞰的に捉えるための視線移動は少なかった.一方,理学療法士の視線軌跡では動作時に対象者の全身を1か所に留まることなくみており,また麻痺肢と体幹とを交互に見返していた.さらに,対象者とベッド,車椅子などの周囲環境との関わりに配慮した視線移動がみられた.2)レポート内容:学生のレポートでは線図,姿勢・運動の表現は全ての者が正確に記述していたが,各相に分けた動作の運動力学的説明,姿勢・動作の解釈を正確に記述できた者は僅かであった.臨床で行う動作分析では観察した動作を空間的・時間的に運動学用語で記述し,異常もしくは代償運動を発見した折にはその原因となる機能障害を同定することが含まれる.こうした動作分析の「結果の統合と解釈」は原疾患による機能・形態障害及び二次的なそれについての知識を備えていなければ,対象者の運動機能を判断することは困難と考えられる.今回,学生は視線軌跡から対象者の限局した部位のみの観察に留まっていたこと,個々の知識を関連付けて異常運動の理解することが困難であることなどから,レポートの内容が不十分なものとなったと考えられる.【結論】学生の動画観察時における視線軌跡解析から初学者の動作分析の特徴が認められ,動作分析技術の習熟度を高めるための教授方法が示唆された.

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© 2006 日本理学療法士協会
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