理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 909
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教育・管理系理学療法
理学療法士と学生の周径計測における信頼性に関する検討
*田中 基隆三島 誠一杉原 敏道
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抄録

【目的】この研究では学生の周径計測における具体的な技術到達レベルを明確にする目的で、この計測における理学療法士(以下、PT)の計測値の信頼性について検討した。また、理学療法評価技術を習得した学生の周径計測における計測値の信頼性係数も求め、PTと同等の信頼性が保証されるのに必要な計測回数についても調べた。
【方法と方法】PT 10名(平均臨床経験4.9±2.8年)と理学療法評価技術を習得した学生10名を対象に、健常モデル1名の膝上10cmの周径を複数回計測させた。被検者には大腿部に巻尺を巻くまでを開眼とし、それ以降の作業は閉眼で実施するよう指示した。計測値は検者が1mm単位で読み取った。メカニカルな計測誤差を除外するために計測は同一の巻尺を用いて行わせた。最初に複数回の計測値から両群の信頼性係数(ICC推定値)を求めた。次にPTの計測で得られたICC推定値を目標として、学生で得たICC推定値をSpeaman-Brownの公式に代入し、学生の計測でPTと同等の信頼性が保証されるための理論的測定回数を求めた。学生にはこの回数をもとに再度計測を行わせ、この回数の計測でPTと同等の信頼性が得られるか確認を行った。
【結果】PTの計測で得られた1回の計測におけるICC(1.1)推定値は0.91、95%CIは0.79~0.98であり、1回の計測でも高い信頼性が保証されると判断した。学生の計測で得られた1回の計測におけるICC(1.1)推定値は0.78、95% CIは0.30~0.93であり、一定の基準に満たないことから1回計測での信頼性は低いと判断した。次にPTの計測で得られたICC推定値を目標値として、学生で得たICC推定値をSpeaman-Brownの公式に代入して得られた値は2.9であった。そのため、PTと同等の信頼性を保証するのに必要な学生の計測回数を一時的に3回計測した際の平均値を用いることとした。3回計測の平均値を用いた際の学生のICC(1.3)推定値ならびに95%CIは一定の基準を満たし、PTの1回計測の基準と同等であったことから、3回計測の平均値を用いることがPTと同等の信頼性を保証するために必要な計測回数であると判断した。
【考察】今回の結果よりPTの周径計測は1回の計測でも高い信頼性が保証されることから、この水準の計測が最終的に到達しなければならない学生の技術的レベルであると考える。周径計測の誤差を招く要因として巻尺への張力のかけ方や、膝上10cmの部位を特定する際の触診技術の問題があると考えられる。そのため、学生ではこのような技術がPTに比べて十分でなかったことが今回の結果を招いたと考察する。したがって、学内ではこのような技術的能力を向上させるための何らかの介入が必要であると考えられた。

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© 2006 日本理学療法士協会
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