主催: 社団法人日本理学療法士協会
【目的】第39回大会において,入学選抜試験における内田クレペリン検査(以下,内・ク検査)の妥当性について,1年前期試験結果との関係から考察した。今回,追跡調査として2年次通年の成績との関係を調べたので報告する。
【方法】対象は2003年度入学の2年生75名(理学38名・作業37名)である。入試の適性検査である内・ク検査結果と,2年次全科目の成績及び進級試験の成績(選択試験・記述試験)との関係を調べた。また,参考として2004年次入学の1年生80名についても同様に調べた。統計処理には一元配置散分析・多重比較を用いた(有意水準5%)。
【結果】内・ク検査の総合評価(性格・行動特性)は高度健常群7名,健常群40名,準健常群24名,変調群4名,作業能力は高水準群18名,標準群45名,準標準群12名であった。2年全科目の平均得点は総合評価別では高度健常群82.6±3.5,健常群78.1±6.6,準健常群77.0±6.4,変調群85.8±4.4で,高度健常群と準健常群の間に有意差が見られた。作業能力別では高水準群81.3±6.8,標準群77.8±6.5,準標準群77.7±5.7であった。進級試験の選択試験は高度健常群62.9±6.7,健常群58.1±8.7,準健常群56.9±7.7,変調群70.0±4.1で,健常群と変調群,準健常群と変調群の間に有意差が見られた。作業能力別では高水準群60.0±9.3,標準群58.7±8.2,準標準群57.3±8.8であった。記述試験は総合評価別では高度健常群64.3±8.8,健常群64.7±10.1,準健常群65.8±8.1,変調群74.0±4.8で,作業能力別では高水準群66.4±10.2,標準群65.2±9.1,準標準群65.1±8.8であった。また,2004年次入学生の内・ク検査の総合評価は,高度健常群3名,健常群45名,準健常群22名,変調群10名,作業能力は高水準群22名,標準群41名,準標準群17名であった。1年生の全科目の平均得点をみると,総合評価別では高度健常群77.1±3.1,健常群78.9±5.5,準健常群78.7±5.5,変調群76.5±5.1,作業能力別では高水準群76.4±4.8,標準群79.6±5.1,準標準群78.3±5.9で,有意差は認められなかった。
【考察】内・ク検査結果と2年次の成績との関係を調査したが,1年次と同様に日常的な努力を反映すると思われる全科目の平均得点では,作業能力面よりも総合評価(性格・行動特性)が試験の成績に影響するとの結果となった。しかし,2004年次入学の1年生では総合評価別では殆ど差が見られなかった。また,対象数は異なるものの,2003年次変調群4名が引き続き好成績であるのに対し,2004年次10名は有意差は認められなかったものの最も成績不良であった。これらより,内・ク検査は面接試験の補完的役割にとどまると思われるが,総合評価(性格・行動特性)で変調群となった受験生に関しては,面接試験において特に注意深く対応し,慎重に判断する必要があると考える。