理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 938
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教育・管理系理学療法
臨床実習合否判定に関する当院での取り組み
*鋤田 郁美原口 真由美大島 正道
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抄録
【目的】
 近年の養成校急増に伴い、当院でも臨床実習生の受け入れ状況は年々増加の傾向にある。指導に当たるスタッフは若年化が進み、多様化する学生への臨床教育に関しては、職域の質を保つとうい視点にたったとき実習のあり方について疑問が持たれる。なかでも、合否判定に関しては苦悩を要する場面が多い。今回、当院における合否判定の基準を作成し臨床実習に取り入れ検討を行った。

【方法】
 対象は、平成17年4月から10月まで当院で長期臨床実習を行った学生13名(男性8人、女性5人)。1)一次判定として学生の資質・能力・将来性を各項目にわけたチェクシートをAからDの4段階で判定する。2)二次判定ではバイザーの指導ポイントをまとめ、学生の長所や改善すべき点などを総括する形式の評価表を用いた。各学生の実習終了時、1)と2)の評価表を用いて全スタッフ参加のもと、合否判定の検討会を実施した。


【結果及び考察】
 従来の合否判定は、各養成校において様々である。担当にあたるバイザーによっても判定尺度に違いが生じ、判定に疑問をもつことも少なくない。臨床の専門家を育成するステップとして臨床実習を考えたときに、ここでの合否判定は大きな意味を持っていると考える。
 今回、一次判定のチェックシートにおける項目は重要項目順に資質・能力・将来性にわけた。重要度順に項目化していくことで客観的に評価できる事を期待した。しかし、4つの判断基準を設けていても、各担当バイザーによって尺度の捉え方に差があり、結果だけで学生をとらえるのは一方向だけで難しい印象が残った。しかし、二次判定では、バイザーの指導内容を重視し、教育のポイントを細かく設定し学生の変化点を具体的に記すようにしていることから、一次判定での結果と踏まえて総合的な見方が出来てきたと考える。この二つの資料を用い、合否判定に関する検討会を全スタッフで行うことで、バイザーは実習期間中の自分の指導内容を常に意識して見直し、学生の変化と照らし合わせる事が必要とされ、判定尺度の差に関しても検討できる機会となっている。また、臨床実習指導の経験の少ないスタッフにとっては、実際に担当するよりも多くのケースを知る場となり、今後のバイザー育成の過程としても力をいれている。このように、養成校の評価表とは別に、合否判定の基準を設けることで、質の高い理学療法士の育成のための有意義な実習が行えるように、更に検討を重ねて取り組んでいきたい。

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© 2006 日本理学療法士協会
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