理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 71
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理学療法基礎系
平地歩行時におけるさらし装着による体幹回旋運動への影響
*武田 要勝平 純司藤沢 しげ子
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キーワード: 歩行分析, 大殿筋, 体幹回旋
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抄録
【目的】骨盤帯における関節の圧迫は効率よい負荷伝達に必須であり、骨盤帯の安定性に関連する筋の一つとして大殿筋が挙げられる。臨床場面では産前産後に骨盤帯の不安定性に対し骨盤の高さにさらしを装着することで歩行が楽になる場面が多く観察される。今回健常女性に対し歩行時でのさらし装着による体幹への影響を骨盤回旋角度、上部体幹回旋角度、骨盤に対する上部体幹回旋角度量を解析パラメータとして3次元解析装置による動作分析手法により明らかにすることを目的とした。
【方法】被験者は研究目的と方法を説明し承諾を得た健常女性9名とした(年齢:平均 27.6±6.2歳、身長:159.7±3.4m、体重:52.1±3.9kg)。測定には3次元動作解析システムVICONMX(VICON PEAK社製)、サンプリング周波数100Hzの赤外線カメラ8台を用いた。マーカーは直径25mmの赤外線反射マーカーを左右計20箇所(第5MP,外果,膝関節,股関節,上前腸骨棘, L5棘突起,剣状突起,Th12棘突起,C7棘突起,頭部耳孔上,頭頂、ダミー)に貼付した。さらしは両ASISから股関節大転子にかけて下から上に巻くように装着した。この時に被験者に大殿筋を収縮させた状態でさらしを装着した。測定項目として水平面における骨盤回旋角度は両ASISを結んだ線と進行方向に対する直角な線とのなす角度、水平面における上部体幹回旋角度は両肩峰を結んだ線と進行方向に対する直角な線とのなす角度、骨盤に対する上部体幹回旋角度は骨盤回旋角度と上部体幹回旋角度の差とした。これらはいずれも左右2歩行周期分の値を採用した。測定課題は3mの平地歩行を3回行い速度は自由速度とし一定の姿勢を保つため進行方向の視線の高さに目印をおき注視させる様にした。統計処理はさらし装着の有無によるそれぞれの回旋角度変化量をstudentのt検定を用い、有意水準を5%未満とした。
【結果】上部体幹回旋角度量はさらしなしでは8.92±2.79度に対してさらし装着時では9.90±2.83度、骨盤に対する上部体幹回旋角度量はさらしなしでは16.27±5.62度、さらし装着時では18.68±6.43度といずれもさらし装着時で有意に増加していた(p<0.05)。骨盤回旋角度量について有意差はみられなかった。
【考察】アウターユニットである大殿筋の収縮は胸腰筋膜の緊張を増大させ、仙腸関節の圧迫により骨盤閉鎖力の機構に寄与するとされる。骨盤にさらしを巻くことで大殿筋への圧迫が起こり骨盤帯を介して下肢と体幹との連結が強められたため上部体幹回旋角度量の増加が見られていたと考えられた。
【まとめ】さらし装着により上部体幹回旋運動が増加すると共に体幹の分節運動が増加することが確認できた。今後体幹の分節的な回旋運動の乏しい妊婦や高齢者に対してさらしによる歩行補助の可能性を検討したいと思う。
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© 2007 日本理学療法士協会
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