理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 72
会議情報

理学療法基礎系
歩行開始時の足関節運動制御
*平岡 浩一阿部 和夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】歩行開始初期には予測的姿勢制御が行われ、これに足関節が重要な役割を果たす。以前、歩行開始時の足関節伸筋の脊髄運動ニューロンプール興奮性低下を報告した(Hiraoka 2005,2006)が、この低下をもたらす脊髄上レベルの活動については解明されていない。本研究では、歩行開始時の足関節運動制御への皮質レベルと脊髄レベル中枢の関与について検討した。

【方法】年齢20-30才の7名の健常者を対象とした。対象者には実験の目的・方法、及び予想される不利益を説明し、同意を得た。歩行開始時に振り出す側と反対の下肢を試験側とし、足関節には電気角度計を、前脛骨筋(TA)・ヒラメ筋(SOL)にはEMG記録電極を装着した。被験者は警告音の2s後の開始合図で2歩前進した。試験試行間には、開始合図を欠落させたコントロール試行を20%の比率で挿入した。H反射と運動誘発電位(MEP)は開始合図後0-300msの範囲内で任意の時期に誘発し、計測後に振幅の増減のtime courseを解析した。H反射は小さいM波が出現する強度で誘発、経頭蓋磁気刺激の強度は背臥位にて10%MVCでTAの等尺性収縮を行った時のMEP運動閾値とした。MEPの記録は医師の指導の下、厳密なリスク管理下で実施した。H反射はM波振幅がコントロールのM波振幅と大方一致するものを解析の対象とした。H反射・MEP誘発直前0-50msのtime windowのTAとSOLのEMG積分値を算出した。

【結果】SOL-H反射振幅は歩行開始前および歩行開始中の全ての時期を通して低下した。これに対し、SOL-MEP振幅は歩行開始前90-60msで低下が観察されたが、同時に歩行開始直前と直後の時期に振幅増加が観察された。TA-MEP振幅増加はEMG積分値増加の約100ms前から始まり、この増加は歩行開始後も継続した。

【考察】歩行開始時足関節運動制御への脊髄レベル中枢の関与が再度確認された。運動ニューロンプール興奮性低下にもかかわらず、SOL-MEP振幅は一部の時期で増加したことから、歩行開始前後には一時期皮質レベル中枢も関与することが示唆された。

【参考文献】
Hiraoka K, Matuo Y, Iwata A, Onishi T, Abe K. The effects of external cues on ankle control during gait initiation in Parkinson's disease. Parkinsonism Relat Disord. 2006 Mar;12(2):97-102.

Hiraoka K, Matsuo Y, Abe K. Soleus H-reflex inhibition during gait initiation in Parkinson's disease. Mov Disord. 2005 Jul;20(7):858-64.
著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top