理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 73
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理学療法基礎系
筋電図干渉波形による虚弱高齢者の大腿四頭筋活動
*米田 宏史下野 俊哉古川 公宣塩中 雅博
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抄録
【目的】
この研究の目的は,健常高齢者と虚弱高齢者の膝関節伸展時における大腿四頭筋活動の違いを表面筋電図で評価可能かどうかを検討することにある.
【対象・方法】
対象は計測に影響を及ぼす疼痛や神経障害を有さない65歳以上の健常高齢者28例,28外側広筋,平均年齢69.3±6.2歳と要介護認定を受けリハビリテーションが必要と判断された虚弱高齢者21例,31外側広筋,平均年齢75.9±6.5歳を対象とした.椅座位で体幹を固定し,膝関節90°屈曲位にて膝関節伸展の最大等尺性随意収縮を行わせた.その際,NORAXON社製マイオシステム2400表面筋電計を使用し外側広筋から筋電図を導出した.計測データより波形の安定した2秒間の筋電波形を分析に用い,平均振幅(AMP)と干渉波解析として中間周波数(MF),基線を横切る回数を表すゼロクロスレート数(ZCR),10μV以上の振幅を持つ極性転換点を示すターン数(TURN)を算出した.これらのパラメータが健常と虚弱高齢者で異なるかどうかを比較検討した.また,計測値の重なり具合から,この両群間を区別できる割合を求めた.
【結果】
健常高齢者におけるAMPは168.5±77.7μV, MFは46.4±6.8 Hz,ZCRは 60.6±9.7回,TURNについては380.8±76.8回であった.これに対し虚弱高齢者ではAMP で112.2±83.1μV,MFで73.6±11.0Hz,ZCRで98.9± 13.9回,TURNは662.8± 82.7回とすべてのパラメータにおいて虚弱高齢者が有意に低値を示した(P<0.01).また,最大と最小計測値の重なりから両群間を区別可能かどうか検討すると,AMPは15.7%(59肢中10肢),MFで86.4%(59肢中51肢),ZCRで 83.1%(59肢中49肢),TURNで88.2%(59肢中52肢)となり,干渉波形解析でその能力が高かった.
【考察】
健常高齢者と虚弱高齢者との間には筋活動における神経機能に有意な差が認められ,虚弱高齢者ですべての計測値が低値を示した.このことは虚弱高齢者で運動単位数の減少や神経線維数の減少を示す筋肉減少(sarcopenia)が強いことを反映していると考えられる.また,両群間の計測値の重なりの程度を見ると,AMPでは多くが重なり合う結果になった.これは表面筋電計での測定では電極位置の違いや皮下脂肪などの影響も大きく,結果として個体差が大きくなってしまうためと考えられた.これに対し干渉波を表すMF,ZCR数,TURN数においては両間の重なりが少なく,高齢者における筋活動における神経機能を捉えるための指標になるのではないかと考えられる.今後,様々な筋電図パラメータを工夫することで高齢者における神経機能の変化を評価し,より効果的な筋力トレーニング方法を検討していくことが出来るものと考えられた.
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© 2007 日本理学療法士協会
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