理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 481
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理学療法基礎系
脳卒中片麻痺患者の非麻痺側・麻痺側における微小循環圧の比較
*江川 季和木下 利喜生幸田 剣三木 健寿田島 文博荒川 英樹星合 敬介
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キーワード: 脳卒中, 細動脈, 交感神経
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抄録
【はじめに】
脳卒中片麻痺患者では、麻痺側上下肢に浮腫が認められることが多い。その原因のひとつとして、麻痺側での活動量低下が筋ポンプ作用を低下させ、静脈血管への血液貯留が増加し、静脈還流量が減少することが考えられている。また、肩手症候群のようないわゆる反射性交感神経ジストロフィーが発症している可能性も考えられている。しかし、その発症機所は明らかになっていない。今回われわれは、細動脈から毛細血管領域の微小循環血流圧を測定できる微小循環圧測定法を考案した。その手法により、脳血管障害片麻痺患者の麻痺側と非麻痺側の下肢微小循環圧を実測し、比較・検討を行った。
【対象と方法】
脳卒中発症から1ヶ月以上経過した男性4名、女性3名の計7名の患者を対象とした。測定は臥位で行い、血圧・脈拍は上腕で測定した。微小循環圧は非麻痺側と麻痺側で測定した。微小循環圧の測定は、レーザードップラー皮膚血流計の測定端子に圧トランスデューサーを接続した。徐々にその端子を脛骨粗面の皮膚に接着し、血流速が測定出来ていることを確認した。徐々にその端子を押し付けるようにし、血流速が下がらず一定となった時の圧迫圧を同定した。この時の圧迫圧で微小循環が停止したと考えると、その圧そのものが微小循環圧であると考えられる。
【結果】
平均動脈血圧は非麻痺側(93.9±13 mmHg)と麻痺側(94.0±10 mmHg)で同等であった。脈拍も非麻痺側(71.9±17拍/分)と麻痺側(71.9±16拍/分)も同等であった。測定にわずかな時間差があったが、その程度では差がないことが確認された。しかし、微小循環圧は異なる結果であった。麻痺側(57.6±2.5 mmHg)の微小循環圧は非麻痺側(54.0±3.8 mmHg)より有意に高い値を示した(P<0.01)。
【考察】
今回の研究により、発症から1-17ヶ月経過した片麻痺患者での微小循環圧は麻痺側の方が非麻痺側と比較して高いことが判明した。麻痺側微小循環圧上昇を引き起こす機序としては次の事が考えられる。第一に麻痺によって筋ポンプ作用が低下したために、静脈還流量が減少し、静脈血管へ血液が貯留し、結果として微小循環圧が上昇する機序。第二に、麻痺側で微小循環圧に関与する細動脈の活動を調節する交感神経活動が低下し、動脈圧の減衰が少ない状態になっている可能性である。いずれの機序にしても、今回の研究により、麻痺側で浮腫が生じやすい理由として微小循環圧の上昇が関与している事は明らかとなった。今後、各種病態を通じて検討を重ねていく必要がある。
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© 2007 日本理学療法士協会
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