理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 482
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理学療法基礎系
同種造血幹細胞移植患者の身体活動量に対するリハビリテーションプログラム導入効果の検討
*井上 順一朗小野 玲竹腰 久容八木 夏紀松井 利充
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抄録
【緒言】同種造血幹細胞移植(以下、移植)は、白血病や重症再生不良性貧血などの血液疾患に対する治療法として良好な治療成績をあげている。しかし、前処置としての超大量抗癌剤投与と全身放射線照射、クリーンルームでの長期間にわたる隔離・安静、合併症などにより身体活動が制限され、重度の廃用症候群が生じる危険性が非常に高い。当院では移植患者に対し、2005年9月より理学療法士指導による廃用予防のためのストレッチ、筋力増強トレーニング、エルゴメーター、ウォーキング、段差昇降などのリハビリテーション(以下、リハビリ)プログラムを導入し、身体活動量の維持・増進を行なっている。今回、リハビリプログラム導入による移植患者の移植後クリーンルーム内における身体活動量をリハビリプログラム導入前の移植患者と比較検討したので報告する。
【対象・方法】対象者はリハビリプログラム導入前移植患者10名(女性6名、男性4名、46±10歳)と導入後移植患者10名(女性7名、男性3名、48±16歳)であった。主なアウトカムは、身体活動量の指標としての生活習慣記録機(Lifecorder EX、スズケン社)を用いて測定した移植後クリーンルームクラス100期間、移植後クリーンルームクラス10000期間における平均歩数とした。その他の変数として、合併症の重症度を急性GVHD重症度分類のgrade 0~IIをnot severe、grade III~IVをsevereとした。統計解析は、Wilcoxon順位和検定とχ2検定を用い、有意水準5%未満を有意とした。
【結果】移植後クラス100における平均歩数は導入前730±669歩、導入後1004±519歩(p=0.03)であり、クラス10000における平均歩数は導入前1060±708歩、導入後2502±676歩であった(p=0.002)。重度合併症は、導入前では重度合併症移植患者4名(40%)、導入後では2名(20%)であった(p=0.63)。
【考察】クラス100は生着前であり、また、倦怠感などの合併症が強くリハビリプログラム導入後であっても積極的な介入は困難であったが、臥床時間の短縮を目的にADL上座位を促すなどの指導を担当看護師と協力して実施することにより、導入前と比較して身体活動量の確保が可能であった。クラス10000では理学療法士によるリハビリプログラム導入により各種治療プログラムの実施が可能となり、移植患者の身体活動量が維持・増進され廃用症候群予防に有用と考えられた。今後は移植前、移植後早期リハビリ、退院後など一貫したリハビリプログラムを検討する必要がある。

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© 2007 日本理学療法士協会
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