理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 511
会議情報

理学療法基礎系
O脚を呈する若年女性の関節弛緩性と足趾筋力
*松崎 秀隆甲斐 悟高橋 精一郎村上 茂雄森田 正治
著者情報
キーワード: O脚, 足趾筋力, 関節弛緩性
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
整形外科疾患の一つに「変形性膝関節症」がある.女性に多く殆がO脚を呈している特徴があげられる.この変形性膝関節症についてはアライメントを基本に荷重・関節面との関係,生活様式の違い,筋力低下など諸説の研究がある.性並びに肥満との関係が深いことが明確になっているものの,具体的な発症メカニズムは解明されていないのが現状である.先行研究の中で,橋村らは「若年時にO脚傾向にあるものは,加齢により変形性膝関節症に罹患する可能性が高く,膝関節外側角度180度以上の変形性膝関節症として初発すると考えられた」と述べている.本邦においては日常和式の生活が主であり,膝関節の機能形態は重要な問題であると考えられる.そこで今回,若年でO脚を呈する女性に着目し,身体的特徴を把握するために研究を立案した.
【対象】
当学院在学中の女子学生で,下肢に手術既往が無く両足関節内果を付けた立位姿勢において両膝関節内顆間が4横指以上のO脚アライメントを呈する者7名(O脚群),同姿勢において生理的外反のみを認める正常アライメントの者7名(正常群)の計14名,全例右足を調査対象とした.平均年齢は20.3±2.7歳であった.対象者には実験の説明を行うとともに,研究参加への任意性と同意撤回の自由について承諾を得て施行した.
【方法】
足趾屈曲筋力測定(Toes Flexion Strength Test以下TFSTと略す)は竹井機器工業社製デジタル握力計を改良した測定器を使用し,端座位にて膝関節90°屈曲位,足関節中間位で最大筋力を3回測定し,最大値を採用した.関節弛緩性テスト(General Joint Laxity Test以下GJLTと略す)は,全身の主要関節を評価する東大式の全身弛緩性テストを採用し、7項目の総点数で評価した.O脚群と正常群の比較には,両検査ともMann-Whitney検定を用いた.
【結果】
TFST並びにGJLTにおいてO脚群と正常群の間に有意差があることを確認した.TFSTにおいては,正常群の平均が12.61±3.2kgに対し,O脚群では8.65±1.8kgでありO脚群が有意に低下(p=0.026)していることが分かった.また,GJLTについても正常群が1.71±0.75点に対し,O脚群では3.50±1.8点と全身の弛緩性が有意に高いこと(p=0.026)を認めた.
【考察】
今回,TFST並びにGJLT測定を施行しO脚群の足趾筋力低下,関節弛緩性の高さを確認した.関節弛緩性の高さは歩行時の立脚期における中心靭帯系安定化機構の低下を招き,その結果,足趾での十分な踏み返しが得られずに筋力に影響したと考えられる.O脚そのものは障害ではない.しかし,筋力低下,関節の弛緩性は将来何らかの障害を引き起こす危険性を含んでおり看過できない問題である.学会ではより詳細な分析を加えて報告する.

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top